36 / 108

第四章 発覚と抵抗 四

「それがいい。君の裸見てみたかったんだよね……」  織崎の取り巻きが、いいねいいねと盛り上がりはじめた。  最初は冗談だと思い、苦笑いしていた俺も、皆からのはやし立ててる奴らの視線がいつもと違い、妙な艶めかしさを感じ、怖くなってきた。  その場にいてもたってもいられず、即座に立ち上がる。 「おっと、どこに行くんだよ」  いきなり織崎に腕を掴まれ、俺はびくりと体が跳ねた。  いままでにないこんな扱い。そして動揺してしまった自分の反応にも驚いている。  みんなの視線が怖い……。そんな風に思ったのも初めてだった。 「もちろん裸夫画ってことで、裸になって欲しいな、アヤトくん。少しシャツを脱いでるような感じでもいいよ」  織崎の言葉に、背後から、おっ、芸術的じゃん! とひゅーとはやし立てる声が多数聞こえた。 「じょ、冗談言うなよ、俺は……」 「なぁ、オメガっていうのは奉仕する人間なんじゃないのか? 前にお前そう言ってたじゃないか。俺たち上級者のためにな」  腕を掴む男の視線が怖い。手が妙に熱く、汗ばんでいる。しかも妙な震えを起こしている。  それが劣情的なものに感じ、俺は怖くなった。  不意に男の腕を誰かが掴んだ。 「止めろ」  琉だ。 「なんだよ、宝田。これから面白くなるってのに、お前もアヤトちゃんの裸見たくないのか?」 「そうだぜ、俺たちは何も変な意味で言ったわけじゃない、先生も言ってただろ? 芸術なんだよ、こいつは性格は最悪だが、見てくれはいいからな、きっと描きがいがあるぜ?」 「お前ら……」  俺はたぶんその時顔面蒼白になっていて唇も青かったのだろう。あれほど立場があった時は強気になんでも言えたのに、今の俺はまるで何もできない小動物だ。 「そんなにモデルが欲しいなら……」  琉は何を思ったのか、いきなり自分の着ているシャツのボタンに手を掛けて、脱ぎ始めた。  俺はドキリと心臓が跳ね上がり、近くの男がえっ、と小さく声を上げた。  琉は上をすっかりはだけさせると、俺たちの前に立ち尽くす。 「俺がモデルになってやる、さっさと描け」  琉の体は肉付きがよくて、着やせするタイプなのだろうか、想像よりずっと筋肉がついていた。  彼らの一部が少し赤面して慌てた様子を見せる。  織崎は軽く舌打ちをして、周囲を苦々しい顔で見渡した。 「さぁ、描かないのか」  琉が少し怒ったように彼らを睨め付けた。 「な、なんだよ、軽いジョークだって、な、なぁ……」  琉の勢いに周りの生徒が怖気づいた。 「ちょっとあなたたち、何の騒ぎなの!」  俺たちの騒ぎに気付いた、先生がすぐに駆け付け、ざわつく教室内を怪訝そうな顔で見た。   「大丈夫か?」  気づくとそっと琉が傍に来ていて、耳元でささやく。  手が俺の肩に触れ、俺は自分の唇が震えているのに気づかれたくなくて、無言で唇をかみしめた。  琉の手が大きくて暖かくて、悔しい気持ちの中に、少しだけほっとした気持ちと鼻の奥がツンとするような気持ちが混ざっていた。

ともだちにシェアしよう!