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第四章 発覚と抵抗 七
俺は背後にいる沼間をちらりと見てから両親に向かった。
「今ここには沼間教授がいる。彼はここにいていいのか?」
部外者に自分の大事なことは聞かせたくない。
けれど、不思議なことに両親は妙に落ち着いた様子だった。
「いいんだよ。沼間教授はきっとこれからお前の助けになってくれる……」
「えっ……」
俺はなんだか嫌な予感がした。関わり合いになりたくない奴が、助けになってくれるとはどういう意味なのか。
それに、今のいままで俺がオメガであることは周りの人間の嫌がらせに違いない、これは夢だ嘘だと、この沼間教授含めてどこか現実を受け入れられない自分がいた。けれど、ここで彼らに現実を突きつけられたら俺は……。
「アヤト、エムルがいつもお前に飲ませていた二種合わせた薬を飲まなくては……。それは……二つのことを抑制するためのものだ。一つは血液検査をした時にアルファと反応するためのもの、そしてもう一つはオメガ特有の発情期を抑えることだ……」
「なんだよ、それ、どういう意味だよ!」
「すまない……今回のことで、世間は私たちアルファとベータがオメガを産んだことに関しての偏見を恐れていると思っているかもしれない。けれど問題はそこじゃない」
鼓動がうるさい程音を立てている。目の前の景色がゆがんだ気がした。
「お前はね、オメガの中でも特に抑制剤が必要なんだ。オメガ2マイナスという珍しいタイプなのだそうだ。そして理性的なアルファとして生きることで、精神的にも肉体的にも成長する必要があったんだよ。今は理解できないかもしれない、けれど、こんな形で暴かれるようなものではなかった……でも、お前がオメガであってもアルファの沼間教授がこれからはお前の大事な人として私たちとお前を守ってくれるそうだ」
「……何を言ってるかわからない」
「沼間教授なら信頼してもいいと私たちは思ったんだ。なんと言っても遺伝子研究の第一人者だしね」
「ちょっと待ってくれよ」
「私たちの罪も上にきちんと説明してくれる上に、お前にもこの先悪いことがないようにしてくれるんだ。だから大丈夫だよ」
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