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第四章 発覚と抵抗 九

「あれ、どなたかと思えば先ほどのアヤトちゃんじゃないですか?」  どうやら俺を転ばせた声の主らしい。顔を上げると美術の時間にからかわれた織崎たちだった。  顔を上げるとわざとらしく足を延ばしたままこちらに下卑た笑顔で見下ろしている。  誰がちゃんだ。どいつもこいつも気色の悪い。   「お前さ……前から気に入らなかったんだよな。俺は気位の高いアルファですって顔していつもすましやがってよ」  織崎の手が俺に伸びるとシャツをつかもうとする。  今まで俺に対して下手に出ていた奴らのこれが本性なのか……。  俺は咄嗟にその手を払いのけた。   「止めろ、シャツが乱れる」 「何がシャツが乱れるだよ。そんな高貴な身分でもないくせにな」 「オ メ ガ の羅姫アヤトくん」  心の芯がジュッと焼け焦げたような気がした。  俺は彼らを無視してそのまま校舎に入ろうとしたが、彼らはなおも食い下がる。   「おいおい、無視かよ、なぁ、前に俺らの事散々罵ってたよなぁ? あ。ちょっと顔かせよ?」  ……こいつら。  俺はふつふつと怒りに火が付きそうになりながら堪えた。  誰がてめぇらみたいなベータなんかと肩を並べるか! 「あ~あ。お前は隠れオメガだったんだよなぁ。可哀想になぁ……。自尊心強くてアルファであることを鼻にかけてたからなぁ。まだ自分がアルファだと勘違いしている? ショックでまだ自分がオメガであることが自覚できない? だからまだそうやってアルファのバッジを未練たらたらで肩につけたりしてるの?」  せせら笑う声が聞こえて、再び来る眩暈と現実に再び吐き気を感じる。織崎たちが笑った。この俺に対してだ。 「ねぇねぇいつ発情期はやってくるんだ? 腰を振って俺たちを誘って見せろよ?」  俺は歯を噛み締めた。

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