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第四章 発覚と抵抗 十一
そのまま顔を覆われた布を取り除かれると、俺はマットが敷かれている場所へ放り投げられた。
どうやら体育館の裏にある用具入れ室のようだった。
白いシャツも埃で汚れてしまった。俺はそれだけで怒りなのか悲しみなのかわからない感情に支配された。
「お前、態度は最悪だったけど、見てくれは結構人気あったんだぜ? 肌は白いし、体は細身だ。涼し気な視線が気持ちを高揚させたからな。アルファでなければと常に話題にされてたぜ? いつも熱いラブレターが靴箱からはみ出てたしな」
「すっごい情熱的な官能小説みたいなのもあったよなぁ、まぁそういう風に人気があるのも、お前の正体がオメガだったということで納得がいったわけだ。実はこっそり発情して周りにフェロモン振りまいてたんじゃねぇの?」
織崎はニヤニヤと笑いながら俺の体を舐めるように見つめている。
なんだこいつら……俺に来ていた手紙を勝手に盗み見たのか?
ただならぬ空気に俺は今まで感じたことのない恐怖を感じた。
しかもこれから何をされるのかわからないのに、さっきから体が熱くて動けない。
未知の感覚と恐怖に抑えたくても体が震えてくる。
「あれ? どうしたの子猫みたいに震えちゃって」
織崎の仲間うちの一人が声を上げた。
「おいおいおい、発情期はじまっちゃったんじゃねぇの?」
一人が俺を羽交い絞めにしてくる。
「や……めろ……」
後ろから抑え込まれて、改めて俺は自分の体の変化に気づいた。
「おいおい、本当に始まったみたいだな」
目の前の男が嬉しそうな顔で俺のスラックスを指さすと、俺の下半身がテントを張っている。
う、そだろ……まさか……さっきの沼間とのことで、俺の体が変になったのか……。
一瞬嫌な想いが過った。
詳しくはなかったが、ほんとに稀にオメガの中にも特殊な人間がいて、それはアルファの特殊な人間と非常に強く反応しあい、番になるという。一度その二人が体の関係になると、もう二度と他の人間が目に入らなくなり、オメガはひたすら生殖活動に限界まで勤しむという。
俺が憧れていた赤い糸の伝説が音を立てて崩れていく……。
あそこに沼間がいたということはオメガの俺が番となるアルファに反応したのか?!
嘘だ……そんなこと嘘だ!
なにかもが歪んで、狂って、俺自身もおかしくなりそうだ。
「嫌だ、止めろ、見るな、見るなぁぁあああ!」
後ろから腰に腕を回された。
「や、めろ!」
「まだそんな強気でいられるんだ……」
前から男に抱きすくめられ、俺は足をばたつかせたが、男が耳たぶにそっと唇を押し付け、軽く甘噛みされた。
さらに後ろの男が俺の首筋に軽く吸い付き背中がぞくりとした。
男の一人がシャツのボタンに手をかけ外そうとする。
「た、頼む……冗談はやめて……くれ……」
地面がぐにゃりと曲がり、これは悪い夢だと何度も首を振った。
男たちの手が体のあちこちをまさぐり、シャツの中に手を滑り込ませた。
「いやだ、誰か、助け……!」
そういいながらも男たちの手の動きに翻弄され、どこか意識がもうろうとしてくる。
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