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第四章 発覚と抵抗 十二
「何をやっている!」
突如扉が開くと、大きな声が部屋に響き渡った。
開かれた用具室の入り口に、琉が立っていた。
琉はシャツをまくり上げられている俺の姿を見て、目を見開くと、まるで全身の毛が逆立ったように、震えた。
「お前ら……!」
いつも穏やかな琉の眉間には皺が寄っていて、目が吊り上がり、いつも一緒にいた俺でも一瞬縮み上がるほどだ。
まるで野獣のように彼らに突っ込んでいくと、ニ、三人が一瞬で壁にぶち当たり、転げ落ちた。
その勢いに気迫に怯んだ奴らは、身の危険を感じたのか、その場から去ろうとする。
「待て、許さんぞ!」
叫ぶ声がまるで咆哮しているようだ。
り、琉?! どうしたんだ! いつもと様子が違いすぎる。どうしたっていうんだ……。
織崎の頭を掴むと、今にも床に叩きつけるような勢いで、高く上げた。
俺はヤバイと思って琉の背中に飛びついた。
「やめてくれ、琉、それ以上やると、織崎が死んでしまう!」
俺が縋りついたことに気づいた琉ははっとして、織崎をそのままマットの方へ放り投げた。
「こ、こいつやべぇ……」
一人が呟くと、一人、また一人と、その場を逃げるように散り散りになった。
「琉、どうしたんだよ、琉!」
俺は息が荒くなっている琉にそれでも必死にしがみついた。
「ア……ヤト……」
まるで琉が琉でないような気がして、俺は怖くなったのと同時に、胸が苦しくなった。
琉はいつも穏やかでいいやつなんだ。どんな時も冷静で、感情的になる俺をいつもどこかで落ち着かせてくれる。
その琉が、変になってしまった……!
「琉、どうしたんだ、しっかりしろ、お前、おかしいぞ……」
琉は突然俺の上にのしかかるとぎゅっと抱きしめた。
「琉……どうしたんだ! よせっ」
一瞬で顎を掴まれると、琉の唇が俺の唇を食べるように重ねてくる。
前にキスしたよりもそれはずっと熱を帯びていて、舌がぬるりと滑り込んでくる。
「ん……! ん……」
まるで体中を吸い尽くされるんじゃないかと思うほどの、暴れるような舌の動きに、俺は思わず背中にピリリと電流が走るような刺激をを覚え、口の端から吐息がもれた。
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