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第四章 発覚と抵抗 十三

 アヤト……オレノアヤト……。  低い所から熱情を含んだ声がまるで頭の中から聞こえてくるようだった。  それはそれ以上ハマってはいけない、何か恐ろしいもののような、そんな気配だった。 琉の舌が俺の舌をすくいあげて吸う。  抱きしめていた琉の手が怪しく俺の体を撫で、右手で、俺の下半身の収まりがつかない欲望をそっと撫でた。 「んっ……ふっ……ぁあ!」  撫でられただけで、痺れるような、頭を突き抜けるような快楽が体を一気に駆け抜けた。  抵抗をするという言葉が思い浮かばないくらい、凄い引力で彼の手が触れただけで甘い衝撃が一気に背筋を駆け抜けた。 「あ、あぁあ! や、やめてくれ! いやぁあああ!」  俺は抵抗むなしく、その場で果ててしまった。  しばらく体の震えが止まらない……。情けないことに少し涙が滲んで呆然としてその場を動けなくなってしまった。 「……アヤト!」  見返すと琉も正気に戻ったのか何が起きたかわからない様子で、辺りを見渡す。少しこめかみに手を当てて頭を振る。 「アヤト……一体、俺はここで何を……」 「……何をって、……覚えてないのか?」 「あぁ、いや……。お前が襲われそうになったことだけは覚えている……」  琉の身に何が起きたのかはわからなかったが、俺は俺の恥ずかしい失態が彼の記憶にないことにどこかほっとしてしまった。 「すまない……アヤト、俺は沼間教授の部屋の傍にいた。お前が飛び出してきたから、気になって追いかけたんだ。でも……途中で記憶が飛んだ……」 「……」 「……で、お前は無事だったんだよな……?」 「あ、ああ。な、なんとか」  本当は無事ではない。正直今すぐにでも琉の前から消えたいくらいだ。  下着の中が濡れていることに恥ずかしさを感じ、俺は咄嗟に上着を腰に巻いて隠した。  でもあの衝撃からとりあえず大人しくなった体の疼きに、とにかく早く家に帰った方がいいような気がした。 「お前が、無事でよかった……」  琉は酷く安心した顔をした。  俺はいつもの琉の優しげな笑顔に、先ほどまでの緊張感がほどけ、思わず目の前が滲んできた。 「アヤト……?」 「な、なんでもない、なんでも」  俺はすぐに顔を反らして、彼の見ていないところでそっと涙をぬぐった。

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