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第五章 運命に抗いたい俺たち 一

 俺たちはとにかく、俺の飲んでいる薬に関して詳しいだろうエムルの行方を探すことにした。  俺たちが琉の寮から出ようとすると、目の前に一台のエアカーが止まった。  中から俺らが見知った人物が下りてくる。 「お父さん……」  琉はこの寮には恐らく初めてきたであろう彼の父親の姿を見て、驚きの声を上げた。 「琉、お前、休学届を出したと聞いたが、どうしたんだ」  琉の父アルファであるミカサがスーツ姿でコツコツと革靴の音を響かせて近づいてくる。 「家の執事に伝言した通りだよ、今アヤトが大変な目にあってるんだ。だから」 「だからと言ってお前が休学してまで、アヤトくんに協力しなくてもいいではないか、彼のご両親はどうしたんだ?」 「火星に逃げたんだよ、心細いアヤトを一人置き去りにして……」 「さっき沼間教授から連絡があった。アヤトくんのことは沼間教授に任せたらどうだ?」 「沼間教授には任せられない、アヤトが嫌がってる。それに俺の事ももっと知りたい」 「そんなことはまだ知らなくてよい!」  ミカサは琉にぴしゃりと言い放った。 「ろくにここになんてこないくせに、こんな大事な時にばかりきて、親面するな!」  琉がミカサを険しい形相で睨みつけている。  琉の父親と琉はあまり仲が良くないとなんとなく昔から思ってはいたが、こんなに直接的に言い合いをするのは初めて見た。 「行こう、アヤト」  琉は彼からすり抜けるように逃れると、そのまま俺の腕を取り、少しだけ背後を気にしながらその場を離れた。  琉の父親は何か言いたそうなそぶりで躊躇しているように見えた。  無言の琉に俺は何も話しかけることができない。  中央都市行きの電車がホームに滑り込んでくる。少しだけ錆びついた車体に飛び乗ったのは、それから三十分もしない十時過ぎだった。  普段ならもう学校で講義を受けている時間だ。  でもそんなことよりもずっと大切なことを俺たちは俺たちの力で知ろうとしている。

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