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第五章 運命に抗いたい俺たち 二
車窓越しに見る殺風景な景色を見ながら、俺はある程度覚悟を決めていた。
ここに来たのは久しぶりだ。ノースエリア大の付属高校に来た時以来か……。
目的地駅周辺は相変わらず変わり映えしない簡素なところだった。目の前には広大な土地が広がる。
今はこの駅よりも新中央都市の方が空港も近いし、人の賑わいも違う。
中央都市は以前は都心だったそうだが、空港の引っ越しに伴い、膨大な土地だけが残る形になった。
そこへ各高校や大学や研究所が設けられるようになったのだ。
新しくはないが、学生街なので、広く一つ一つの区画も広い。
学生たちが行き交う改札に俺たちの良く知る体格の大きな男が立っていた。
カミーユはいつもと変わらない笑顔で俺たちに手を振っていた。ごつい体つきの割にはいつも笑顔が人懐っこくて柔和だ。
隣に見慣れない綺麗な男性が二人立っている。
驚くことに二人は同じ顔をしていた。双子だ。
そして二人とも、銀髪で長めのストレートの髪を束ねていた。
「こんにちは、お久しぶりです」
琉がその人物に頭を下げた。
「いらっしゃい、琉さんならいつでも歓迎しますよ」
その彼がこちらをちらりと向く。
「あ、彼は羅姫アヤトくん、その例の……」
先に話が通っているのだろう、彼はぱっと笑顔になって俺に頭を下げた。
「初めまして、エルピです」
エルピとまったく同じ顔の男がいるが、今自己紹介をしたカミーユの隣にいるエルピが彼の恋人なのだろう。
時折カミーユと微笑み合っている。
「初めまして、エルピの兄のフロンです」
すぐにその更に隣にいる同じ顔が微笑んだ。彼は左目の下にほくろがあった。
カミーユととても親し気に話をしていた、エルピ、そして双子のフロンも恐らくオメガなのだろう。
自分が降格したからというわけではないが、彼らを見たところで別に特別変なこともない。
むしろ二人とも知的に見えるし、スラリとしていて肌は白くスタイルも良くて美しい。
「しばらく彼らの家でお世話になろうと思うんだが……」
琉の言葉に俺はただ彼らに頭を下げる事しかできなかった。
「琉さん、お久しぶりです、また会えて嬉しいです」
フロンが琉に笑顔を向ける。先ほどからフロンは俺よりも琉しか見ていない。
俺は何となく彼の様子からフロンは琉に好意を持っているということを察した。
正直気まずい。俺は彼らの前でオメガを馬鹿にしたことはないが、今までの自分の行動を考えると、屈託なく笑う彼らに対してどんな態度を取ったらいいのかわからない……。
そして中央都市から更にエアカーで十分程の家が彼の家だった。
家というか想像以上に大きく立派な屋敷だ。セキュリティも厳重そうで重厚な門が構えている。俺は琉の実家を思い出した。
二メートルはあるのではないかと思う木の細かな葉の模様を施した大仰な玄関が開くと、中からメイドや執事らしき人が頭を下げた。
「いらっしゃい、この度はよく来てくださいました」
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