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第五章 運命に抗いたい俺たち 三
とても広い屋敷で俺は正直驚いた。家族構成はどうなっているのかわからないが、門に入った時からこの家は完全な富豪だと思った。
「お部屋はこちらです。困ったことがあったらいつでも言ってくださいね」
メイドと同じようにエルピも先ほどからずっと物腰柔らかく対応してくれている。
廊下の途中には大きな石像があったが、足元が壊れているのか何かで固められていた。
琉と俺とサエカのボストンバッグなどの荷物はメイドや執事がカートに乗せ、俺達は部屋に案内された。それぞれの部屋に荷物が置かれて行く。
部屋を確認した後、すぐに俺たちはサロンに集まった。
サロンにある本棚には様々な本がびっしりと詰め込まれていて、その上には表彰状や何かで優勝したであろうトロフィーの数がいくつも置かれている。
それを俺はちらりと見ると、部屋の中央にあるテーブルに落ち着いた。
目の前にはジャスミンティーが一人一人の席に透明なポットごと置かれてあった。
双子の弟のフロンは琉の席の隣に座ると、どこか落ち着きなさそうにしている。
俺の席から斜め前にも何か額縁が飾ってある。
俺はそれを何気なく見上げていた。栄養士、保育士から始まり、介護士、語学の資格まで様々だ。
「あれ気になるか? 凄いだろ。エルピとフロンは凄く色々なことに興味があって、資格やコンテストなどにいつも応募してはいい成績を収めたり、合格したりして、こうして表彰状をもらっているんだ」
「凄いな、エルピが頭がいいことは前から知ってはいたが、フロンもこんなに色々な資格を持っていたなんて……」
琉が彼らに心から賞賛を送っているのは、彼の穏やかな表情と瞳が糸のようにすっと細くなることでわかった。
「いえ、そ、そんな。ここにあるのは兄のエルピのものが多くて、僕なんてまだまだです」
ほっとするような優し気な彼の表情が、俺には見せたことがないような気がして、俺の胸のどこかが少しだけきゅっと苦しい気分になった。
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