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第五章 運命に抗いたい俺たち 四
カミーユは自慢の彼氏が褒められたのが嬉しかったのか、とても機嫌がいい。
「この部屋だけじゃない、他の部屋にもまだまだ沢山の表彰状や資格取得証明書があるんだよ、エルピは努力家なんだ」
俺はなんだかこの凄い量の資格や本と先ほどちらっと見た物腰の柔らかなエルピ姿があまり俺の中で重ならなかった。
それほど彼は見た目が華奢で優し気で、これだけのものを取得していてもどこにも偉ぶった態度がなかったからだ。
そのエルピは後から部屋に入ってきた。
「エルピ、今お前の話をしていた」
いつもよりどこか興奮していたのか、顎が上向きになっていつもよりも饒舌に語るカミーユを見て、エルピは少し恥ずかしそうに下を向く。
「いやだ……カミーユったら、そんな大したことじゃないよ、ここにはフロンのだってあるんだから」
「ほんとに二人とも凄いと思う」
琉がエルピとフロンにも向ける温かな視線を見て、俺はまた胸が騒めいた。
そしてその場にいる自分がとても恥ずかしく、みじめにも思えた。
俺は自分の地位に胡坐をかいていただけで、自分から何かをしようとか、彼等のように知識を深めたり技術を手に入れようという考えをあまり持たなかった気がする。
俺も資格が何もないわけではない、けれどそれはいつも自発的というよりも、自分の立場上持っておいた方がいいだろうと親から勧められたり、自分を大きく見せるにはいいだろうと推測したりしたことばかりなことに気づく。
しかもそれらは自分から興味があったり、やりたいと思ったことではなかった。
俺を残して三人だけが顔見知りということもあるが、会話が弾んでいて、俺だけが世界から取り残されたような気分になった。
食事の間にも俺は軽く相槌を打つだけで、何も自分から話することができなかった。
食事が終わり、みんながお茶を飲んでいる間、フロンが俺に話しかけてきた。
彼と出会ってからというもの、実は琉を見つめる間にも、時折俺にも何か話しかけたそうにすることが幾度もあった。
でも俺の方が何故か気まずくて、その機会を自ら無視していた。
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