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第五章 運命に抗いたい俺たち 七
俺はついさっきその話で両親から教授とその関係を望まれて、吐き気がしたばかりだ。むしろその生理現象には憤りさえ感じる。
最近までそんな悩みを露とも感じなかった俺が、まさかこんな思いをしなくてはならないなんて……。
「好きな相手とつがいになれるのなら最高なんだけどね」
呟くフロンは俺以外の誰かに想いが向いているようだ。
「……好きな相手ならな」
「もし仮にだよ? 自分に好きな相手がいるのにこっちのが相応しいからって他のアルファが割り込んできたらどう思う?」
「……嫌だ」
俺は流石に俺の両親が沼間教授とつがいになることを望んでいるということまでは話せなかった。
口にするのも嫌だったし、そんなものは不快で仕方なかったからだ。
「アルファっていうのはなんでも自分が世界を掌握してると勘違いしているんだ。このつがいという生理現象も、昔ほどはなくなったとしても、さらに奴らを調子づかせてる証拠だよ。僕たちはなんでそんな強引な繁殖方法が人間の意思と違うところで起きるのか、たぶん、さっき言った製薬会社の中の僕の知り合いが、そのつがいについて研究してたような気が……」
「……え」」
「フロン、その話は本当なのか……?」
バルコニーの入り口から声がして、俺たちは振り返った。
「琉さん……!」
「その話、よかったら俺にも聞かせてくれないか」
琉がこの話に割って入ってきたことに、フロンが動揺したように感じた。
それにフロンは琉をどこか潤いを帯びた眼差しで見つめ、少し甘えたような声を出し始めたのを見て、俺と接する時とまるで違うことを改めて感じた。
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