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第五章 運命に抗いたい俺たち 十一

「俺は、沼間となんて……嫌だ」  俺の言葉に琉は力強い視線で俺を見返し、頷いた。 「お前も自分が何故抑制剤を飲まなきゃいけないのか知りたいんだろ?」 「……いや、それよりも今はお前の問題に一緒に取り組みたい。俺の事はその後でいい」  子供の頃の自分は何もかもが自由な気がした。  何に対しても自信があって、自惚れていたかもしれない。  でも未来が明るかった。常に上を目指してた。  琉がカミーユが……俺より小さかった。  まるで俺の子分みたいだった。  でも琉はいつもどこか冷静で、俺より背は低かったけれど……。    ダメだって言われてたのに、調子に乗った俺が森へ彼らと共に冒険だと出かけた時に、不意に木の陰から蛇に襲われそうになった。  その時木登りをしていた琉が木の上から飛び降りてきて、木の棒で奴の体を刺した。  俺だって棒を持っていたからその場に俺だけだったとしても倒すことはできたはずだけど、奴の方が素早かった。  いつも何故か琉は俺を助けてくれる時だけは素早い。それ以外の時は落ち着いて見えた。  いつも俺の傍にいて、俺の話をうんうんと聞いてくれるような存在だった。  大人になって行けば行くほど、追いかけられていたはずなのに、今は俺が彼を必死に追いかけている。  並ぶことももちろんできたけど、油断をするとすぐに追い抜かされてしまう。  体格まで変わってしまうとは思わなかった……。  それでも同じ血だと思っていたから、俺は自分のプライドをかけて追いかけることができた。 「さ、なんだか冷えて来た。お前ももう寝ろ、明日は大事な日になる」 「あぁ」  琉の広い背中が部屋のドアへ消えると、俺も自分の部屋に戻り、眠りについた。  今俺はどことも知れぬ暗闇を走っている。  そこは真っ暗な森で俺は必死で茂みをかき分けている。    どこからか何かに追われている、けれどその何かがわからない。  ただ漠然とした得体のしれない恐怖にただ必死に逃げていた。  自分が何者であってどこからきてどこへ行くのか……。    そのうち怖くて動けなくなった。    助けて……。ただただ落ちていくみじめな自分をふがいない自分を誰が必要としてくれるというんだ。  俺といても何もメリットはないと人はどんどん俺から離れていく。    オメガになった俺を誰も必要とはしてくれない……。  目の前に琉が現れて、俺は一瞬ほっとした。  けれど彼の横にフロンが現れて、二人は微笑み合いながら俺の目の前で楽しそうに話をしている。  琉……お前もか? お前はもうフロンと恋人同士で、仲間だと思っていた俺はオメガで……。  俺の事をもう必要とは思ってくれないのか?  この胸の痛みは……。たぶんお前が俺から離れて行ってしまいそうなそんな不安からきているのかもしれない……。  この胸の苦しみは……。

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