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第六章 抗えない苦しみと発情期 三

 気づくと俺はベッドの中にいた。  そして先ほどよりもどこか落ち着いている。  そして目の前には少し胸を撫でおろしたような、少しだけ疲れた笑顔の琉が俺の傍にいて、やさしく見下ろしている。 「……琉……ごめっ」  のどが詰まって、最後まで言葉が出なかった。  さっき自分の身に起きたあれが発情期だというのか。  どうしたらいいのか、何も言い出せず、ただ、俺は涙が溢れていた。  あれから何故今はあの衝動が収まっているのかわからず、困惑した。  心配そうに見下ろす琉の傍にサエカがいることに気づいて、やっと自分の落ち着きから冷静さを取り戻せて、僅かながら記憶を辿ることができた。  俺は薬を飲まされたんだった。 「遅れてすいません、薬……。効いてきてくれたみたいですね? 今まで飲んでいたものよりもずっと強いものらしいです」  俺はあれから相当暴れたのだろう、琉の腕にはいくつかの生々しい引っ掻き傷が見えた。  どんな手段で俺の口に薬が入ったのか、ぼんやりとだが思い出す。  到着したサエカから薬を渡された琉がそれを口に含み、再び俺に口づけをした。  俺は耐えようのない劣情の波で必死にもがいていた。  けれどぐいっとカプセルを押し込まれそれがとけるまで、俺たちはそのまましばらく口づけをしていて……。  琉らしい、この状況でそれなりに理由がつけられる口づけだ。  口の中にカプセルが溶けて甘い蜜のような味が広がる……。    俺は涙が止まらなかった。琉とのキスが気持ちいいからなのだろうか。  オメガの欲情発作の恐ろしさからくる涙なのか……。  それに翻弄されているだらしのない自分が悔しいからなのか……。    十分カプセル内の薬が俺の体に入るまで琉はその甘い口づけをやめなかった。  俺は体の力が抜けたまま琉に体を預ける。   そのまま発作が収まるまで琉に押さえつけられたまま、再び自分の意識が戻るまで俺はそのままだったそうだ。  涙は次第に抗えなかったことに対する不潔な自分への悲しみと自分への絶望に変わった。

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