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第八章 運命のつがい 一

 エアバイクが走る上空は風が強く幾度も髪が激しくなびく。  浮かんでいる高さは二十mはないくらいだが、体に当たる風に少し肌寒さを感じて、俺は少し身を震わせた。  体を支えてくれるエムルもいないんじゃ飛び降りるわけにもいかない。低空飛行になったり、ビルの合間を飛んでいる時に、どこかに飛び移れないかと辺りを見回したが、拘束されていてそれも思うようにいかない気がしている。  空港に向かう先が次第に空が紅に染まっていっている。  遠くから幾つもの光の瞬きが見えた。あれは空港から飛びだった宇宙船に違いない。  ワープ機能の性能が標準な物は小型船であり、主に月に向かう。  最新型の最速ワープ機能を備えた船は火星行きの船で、先端だけ尖った楕円のフォルムの船だ。  船で火星に行くのはいつか叶えたい夢ではあったが、こんな形で行くはめになるとは思いもよらなかった。  しかも俺の人生丸ごと拘束されるためになんて……。    琉の怪我はどうしただろうか。近くにサエカがいたから絶対に処置されているはずだ。  琉が撃たれた時の事を思い出し、俺は思わずうな垂れた。    大丈夫だ。きっときっと……あいつがそんな簡単にくたばるものか。  そう強く思っても俺の心の中は一向に落ち着くことはできない。    彼の傷が癒されることを願い、そして、俺が琉から離れれば、琉はいつもの穏やかで優しい彼に戻れることを信じている。    背後は次第に夜の闇に包まれ、星がぽつぽつと瞬きつつある。その星の瞬きと共に幾つも幾つも琉の笑顔を思い出しては消えていく。  その度に胸が締め付けられるような苦しさに襲われ、切なくて涙が出た。  戻りたい……でも腕が体が拘束されて思うように動けない……。

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