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第八章 運命のつがい 二
俺らのバイクを操縦しているOrder Police Corpsの護衛が再度ミラーをちらっと見て、ちっ、と短く舌打ちをした。
「どうした?」
隣にいる沼間が重たそうな体を乗り出す。
「後方の仲間にあいつらが追い付き襲い掛かっているようです」
「……くっそ。ふん、悪あがきも大概にして欲しいものだな」
強気な発言の割には、少し焦りの色を見せた沼間だったが、ふと上を見て微笑んだ。
「来たぞ。奴らはもう間に合わない」
その時上空から中型の船が俺たちの頭上で影を作る。
いつのまにかOrder Police Corpsの船体が近づいてきていたのだ。
中型とは言え、前に見た時よりもずっと大きな船体でその船首が尖っていた。
下降するのと同時に重々しく後ろのハッチが開く。
俺たちの乗ったバイクがそこへ滑り込み、中の船内へ後続のエアバイクが次々と入って来る。
これは……小型の宇宙船?
「嫌だ、火星になんて行きたくない! 降ろしてくれ!」
「まだ、抵抗するのか、あ?」
無駄な抵抗だとわかってはいたけど、わめいたが、そんな俺の口を沼間が塞ぐ。俺はハンカチのような布を噛されて、そのままぎゅっと頭の後ろで固く結ばれた。
「しばらく火星への旅だが、なぁに心配することはないよ……。火星についたらすぐに入籍して早速その晩から子作りだ、いや、船の個室で今からすぐにでも楽しむか?」
沼間は変に甘ったるい声を上げ、そのまま分厚い唇を俺の頬に押し付けた。
俺は全身がぞくりとし、その拍子にじわりと涙が浮かぶ。
入口はそのまま何重にも連なったドアが重なるように閉まる。
俺はそこから沼間に艦内に引きずられ広いブリッジへ連れていかれた。
ブリッジでは席がいくつもあり、俺はそのうちの一つの席に沈められ、シートベルトを閉められた。
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