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第八章 運命のつがい 三
船内ではOrder Police Corpsの制服を着ている船員が、座席に腰を落ち着かせた沼間に告げる。
「沼間教授、あと四十分もすれば空港に着きます」
「……そこまで待っていられない。このまま管制塔に連絡しろ」
「え、しかし、空港には大型の宇宙船が待機しています。それに乗り換える手はずでは……」
焦る船員に沼間は語気を荒げた。
「それでは時間がかかりすぎる! いいからこのまま火星へ向かえ、この機体なら問題ないはずだ!」
「確かに構造上は問題ないと思いますが。し、しかし、当機は月へのフライトまでしか経験がありません。搭載されているエネルギー充填などを考えると、もっと大きな船の方が……」
「煩い、あいつが来てるかもしれないんだぞ! さっさとしろ!!」
「は、はいっ!」
一人の船員が慌てふためきどこかにアクセスしている。どうやら空港の管制塔へ自船の名称ナンバーを伝え、発着ゲートへの誘導を願い出ているようだ。
OKが出ればそのまま所定のゲート場所を指定され、航路が伝えられる。
そこから地球外へ出ることができるようだ。
本気か!……このまま直接火星に向かう気だ……。
「ぬ、沼間教授!」
他の船員が叫んだ。
「どうした?!」
「右舷デッキフロア近くの船外カメラに何者かが映っています……!」
「なに? モニターに映し出せ!」
切り替わる前面のモニターを見上げた船内の全員がその様子に声を上げた。
スクリーンに、映し出された船頭の先端近い位置に、恐らく琉とおぼしき者が腕を組んで仁王立ちしているのが見える。
先ほどとまた違う未知の生物の融合されたミュータントに近い。耳が尖っていてしっぽが生えている。体は鋼鉄の筋肉質のようで、目が鋭く、牙も生えていた。
胸元にはぐるぐるとさらしが巻かれていて、胸元が血で滲んでいる。
俺が彼から離れても、全くもとの琉に戻ってはいなかった。
それどころか体の変化が増して、獣のようだ。険しい顔をして髪は逆立ち、グオーーーーと咆哮した。
沼間め、話が違うじゃないか!
俺は抗議の視線を沼間に送ったが、艦内はそれどころではないようだ。
「くそっ、もう来たのか! 振り落とせ!」
「このまま上昇します!」
船はエンジンの音を響かせながら上昇していく。
そんな、これ以上上に上がったら、琉が落ちてしまう!
俺は座席で暴れた。けれど、むぐむぐ言うだけで、そんな俺の言葉が誰かに届くわけもなく……。
船は上昇していくが、琉の足はまるで吸盤のように船体にぴったりとくっついたように微動だにせず、まるで船をサーフィンの板を乗りこなすようにバランスを取っていた。
「くっ、しつこい奴だ、うち落とせ!」
沼間が苦々しそうにモニターを睨みつける。
すぐに琉に目掛けて右側から突出したレーザー砲が幾度も火を噴く。
琉はそれを左右に揺れながらひらりひらりと涼しい顔をしたままかわす。
そしてすぐに再び腕を組むと、少しこちらを挑発するように軽く中指を立てた。
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