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第七章 抗えないオメガの運命と…… 九
「何が、俺のアヤトだ。盛のついた雄め。お前は強力なアルファどころか人間ですらなかったじゃないか。そもそもこれはお前らを助けてくれと双方の両親に泣きつかれたのがきっかけなんだぞ! その後はお前はただの研究材料で……くそっ、経過観察に興味を持つべきではなかった。さっさとお前らを引き離しておけばよかった。アヤトはな、俺の物になった方が幸せになる。俺と結ばれて、沢山の子供を産むんだよ」
「なっ……!」
俺は言葉を失った。俺たちの親はどうして泣きついたんだ?
いや、沼間はいつから俺がオメガだということを知っていたんだ?
「沼間、なんてことを!」
叫ぶサエカたちにも沼間は銃口を突きつけた。
「アンドロイドども、お前らもずっと琉とアヤトの管理をしていたのだから同罪だぞ」
「そんな……ワタシたちは良かれと思って……」
「結果的には運よくここまで持ち堪えられたのだから、良しとすべきなのだろうな。そのまま放置していたら、思春期にはこいつらは原始人なみに、それこそ本能の赴くままにまぐわい続けていただろう……そんな恥知らずなことはこいつらの両親には耐えられなかったはずだ」
「俺の親たちがそんなことを……」
「そうだぞ、アヤト、そんなことにでもなったらみっともなくて表を歩けないとも言っていたな。まぁそうだろう。全くスマートさに欠けるからな。そこで私が知恵を施したんだ。お前が原始に近い存在であると認識すればするほどに、お前は成長する度に抑制薬を使ってもなお、アルファだと血を変えてもなお、美しく艶やかにどこか誘うような大人に成長していく。周りが放っておかなかっただろう? アルファなのに何故こんなに惹かれるのか、他の生徒に悩み相談をされたくらいだぞ。私は傍にいて段々お前が欲しくなった。私なら構わないだろう……。琉のようなミュータントのアルファのような本能的で野蛮なことなど私にはないからな」
琉と俺が? 俺らは原始的なのか……?
「長い間こいつらを見守って調整役をしていたんだ。俺にだって報酬があってもいいだろう?」
沼間はそう言いながらレーザーガンを琉にやサエカ、エムルの眉間を挑発するように交互にポインター光を当てる。琉はもとより、アンドロイドの眉間の奥は非常に大切な回路が埋まっている。そこを狙われるのが一番弱い。
彼らは沼間を睨みながらも、その場から動けないでいた。
「沼間、きっかけはそうだったかもしれないが、おぬしは間違っとる……! そんなやり方以外でももっと彼らを上手く調整できたはずだ」
「煩い、さっきから大事な事ばかり垂れ流しやがって!」
怒り狂った沼間は古藪にもレーザーガンを放った。
胸を射抜かれた古藪がその場に倒れこむ。
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