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第七章 抗えないオメガの運命と…… 十
「古藪先生!」
すぐに部屋にはOrder Police Corpsの制服を着た男たちが入り込んできた。
それぞれレーザーガンを手に、俺たちや、サエカとエムルの眉間に標準を当てて脅している。
「もうアンドロイドは用済みだ。こいつらの始末を頼む」
お前の方が人間の血が通っているのか疑いたくなるほど、冷たい言葉を発した沼間は、俺の腕を強引に掴むと俺を引きずるようにドアに向かった。
「ア…ヤト……」
琉はその場で動けないでいる。
「嫌だ、琉! くそっ、沼間、放せっ!」
琉の肩や足からはレーザーガンから放たれた光の煙が上がり、血が流れている。
琉は苦しそうに時折片目を細め、それでも沼間から視線を外さず、睨みつけていた。
「琉さん、動かないで、今手当てをしに行きます……あぁお願い!」
サエカが悲痛な声を上げている。
「アヤト、もうこれ以上琉が変になって、暴れられるのは辛いだろう?」
「こいつは暴走すると手がつけられなくなる、その原因はお前にある」
「……俺の? せい……?」
「そうだ。お前が発情するせいで琉は興奮状態になって、自我を失う。暴走に近い状態になるらしいな。もうここらで潮時だろう。お前は琉から離れた方がいい」
「……琉に迷惑がかかる……?」
「お前がこいつを大事に思うのなら、今後の彼の穏やかな生活のためにはお前は毒だ。今のこいつのボロボロの姿を見て、お前は奴が幸せだと思うのか?」
沼間のささやきに俺は胸が痛くなった。自分のせいで、自分の発情のフェロモンのせいで、琉がおかしくなって、狂暴化して本来の形に戻ってしまうのなら、俺は沼間の言う通り害でしかないのか……。
「このままでは琉は更に暴走して、お前に手出しをしたり、引き離そうとする人間たちに危害を与え続けるだろう……そして、最悪、Order Police Corpsの正当防衛で撃たれ死ぬかもしれない」
「……!」
「流石の私も彼を殺してしまうのはどうかとは思うがな。そうなってしまうのが嫌ならお前が俺に素直に従うんだな。お前はお前の運命に従え。俺とお前は許嫁なのだからな」
「な、なにが許嫁だ!」
「ふん、お前と最初に交尾さえしてしまえばお前は俺のものだ。お前は今誘発剤で発情期だ。俺の子供を身ごもれ!」
「そんな……」
「お前が俺とペアになれば、奴も諦める。そして奴は奴でもっと自分が人間らしくいられる相手と結ばれることによって、こんな姿にはならなくなるのだぞ、これは宝田のためでもある」
Order Police Corps達がレーザーガンの赤外線ポイントを琉の眉間に合わせ今にも琉に攻撃してしまいそうだ。
沼間はそれを見てニタニタと粘っこい笑みを浮かべた。
「今また暴れたり、抵抗すると怪我だけではすまんぞ……アンドロイドたち同様、こいつは即死だ」
「くっ……!」
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