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第八章 運命のつがい 十
「くたばりぞこないが! 今度こそ死ね!」
沼間が乱れ打ちのようにレーザーを何発も放つが、それらは軽く琉の手が弾き返した。
そのうちにレーザーガンの弾が無くなった様子で、出ない銃を沼間は必死に連打していた。
「くっ、そんな、ば、馬鹿な……」
「もう二度とアヤトの前に現れるな。俺の前にもな……。さもないともう次はお前の命の保証はない」
「ひっ!」
沼間は顔面蒼白になり、こくこくと頷いた。
「……まぁ、お前らが無事に火星に着陸できたらの話だがな」
すぐに琉が俺の宇宙船に乗り込んできて、操作する。
琉は俺にシートベルトをつけると、そのまま小型のカプセル船は飛び出した。
対面に椅子があり、琉もシートベルトを付けて座る。しかし、彼にはこのカプセル船は少し狭いようだ。
どうしても体が密着してしまう。
離れた船は地上に落ちるのと同時に、火花を散らし、煙を噴き上げている。
あれでは地上に落ちる前にバラバラになってしまいそうだ。
だが、もうやつらのことなんてどうでもいい……。
俺たちは狭い船内で火星の地上に落ちるまで抱き合うような形で、俺はもうそれでよかった。
今ここに琉がいてくれる……。
カプセルがいよいよ大気圏に突入して行くと小さな船体が大きく揺れた。
琉が耳元でそっと囁いてくれる。
「怖いか……?」
「……少しだけ……」
「素直だな。アヤトは凄く素直になった」
「バカヤロ……茶化さないでくれ……」
俺は琉の大きな手でぐっと肩を抱き寄せられた。
「こうすれば怖くないか?」
「うん……琉が一緒だから怖くない」
「大丈夫だ。お前は俺が守る……」
「ごめんな、琉、俺っ……俺っ」
後に言葉が続かない……今までの気持ちがいっぺんに溢れて、また俺は涙が出てしまった。
「泣くな。もう怖い想いはさせないから、俺がずっと傍にいるから……」
「うん……琉あのさ、俺さ……」
「うん?」
「俺もお前が大好きなんだ」
「こんな姿でもか?」
「うん、いや、むしろかっこいいよ」
俺の言葉に琉が笑顔を見せた。
そっと涙で濡れた頬を大きな手が撫でてくれた。
俺は琉に抱きしめられながら、琉に包まれるように、そして、俺たちはキスをした。
あの時のような、いいや、あの時以上に熱がこもった優しいキス。
でも今度はあの時のキスとは違った……俺の方からも素直に迎えいれた。
今度は一方的なキスじゃない……。
少し唇を離して、琉が目を潤ませた。
「アヤト……」
そう優しく囁くと今度はもっとキスが深くなった。
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