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第八章 運命のつがい 十一
火星の地上に俺たちは緊急着陸した。
この小型のカプセル型の船でも、重力が地球程でないため船体もさほど大きなダメージはなく着陸できた。
また火星には海が無いので、海や川の上で遭難することもない。
船から緊急信号を発していると、遠くからエアカーが何台か近づいてきた。
俺たちはカプセルの中で待機するように言われ、カプセルごと回収される。
そこから小一時間ほどで、ドームが密集した恐らく火星の都市ともいわれる場所へ移動した。
俺はカプセルの中から始めて見る火星の赤い地表を物珍しく眺めた。
地表があるからここが本当に火星なのか、地球なのかわからなくなってくる。
また、月に行った事もあったが、火星には多少なりとも大気があり、月の真っ暗な地表とは違い、地球味があるからそう錯覚してしまうのかもしれない。
空港と思しき巨大ドームに船ごと吸い込まれると、中は地球上にあるドームの中と変わらない街が存在していた。
年々その規模も拡大されているとは聞いたが、実際に訪れてみるとその様子は想像以上に広がっていた。
酸素と地球上と変わらない重力をコントロールされたドーム内で俺たちはやっと緊急小型船から降りることができた。
「あ……琉……」
気づくと隣にいた琉は元の姿に戻っていた。いつもの琉だ。
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