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第八章 運命のつがい 十三

 俺は一千万人に一人出るか出ないかわからないくらいの人類が変化を遂げた初期の頃のオメガに近いDNAを保有していたそうだ。二マイナスというマイナスが付くほど繁殖に特化した種類だそうだ。  そもそもオメガにマイナスが付くことは稀らしい。  そして何よりも問題は俺の発情期だった。  俺は人よりもずっと早く発情期も繁殖も可能らしいだが、それは現在の倫理的に問題になるそうで、通常の発情期を抑える薬ではほぼ効き目がないとのことだった。  もう血そのものを変えることで抑え込むしかない。  と……。そうしなければ若い年からまるで男娼のように誰にでも腰を振るような淫獣と化すとのことにユキトもミチルも動揺した。    それからは専用の医療ロボットエムルを俺につけ、幼少の頃から見張りとしてつけるようにしたそうだ。   「でも……俺はそうだとしても……琉は?」  俺と琉が互いに視線を合わせた。  俺の問題は俺の問題で流れがわかったが、琉は何故その俺が危機的状態になると反応するのか……。 「それは私が説明する……」  背後から声がして俺たちは振り返った。  そこには琉の父親のミカサがスーツ姿で立っていた。   「琉は、私の実子ではない……」  なんとなく想像はしていたが、ミカサは開口一番その場にいる全員が緊張する言葉をまず発した。   「私とお前の母親と結婚した時からもうお前は生まれていた」 「……!」 「じゃ、俺の母親は再婚?」 「……いや……そうじゃない……」 「彼、ナガレと私は月で出会った。その時ナガレは普通の精神状態でなく、月の第四ドームというところに住んでいた。彼は何かから何かを守ろうと常に怯えていた様子だった。その時に家にいたのがお前、琉だ」 「……」 「ナガレはお前を産む前に月にある研究所で助手をしていた……。そこでは不妊治療だけでなく、遺伝子の研究もされていたそうだ。その時に調べてもらったそうなのだが、ナガレは子供が授からない体だったらしい……ナガレはその時子供が持てないのなら一生独身で構わないと思っていたそうだ。ところがそこの研究所で体外受精の話を持ち掛けられた。相手は精子バンクからナガレの希望する精子にしてもらえると聞いていた。彼はもともと結婚願望がなかったらしいのだが、子供は欲しかったので、体外受精で優秀な精子をもらえるのならという気持ちで琉を生んだらしい」

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