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第八章 運命のつがい 十四
けれど、琉は変わった子供だったそうだ。
見た目は普通の可愛らしい子供なのに、何か目に見えない物が見えたり、予言めいたことを言って当てて見せたりと……。そんなある日、地球を眺めていた琉が突然獣のような姿に変わり、吠えたそうだ。それからナガレは怖くなって、琉を庇うように研究所もやめ、琉と月で暮らしていたそうだ。
そこで月に長期出張に来ていたミカサとナガレは出会った。
ミカサは彼の悩みも聞いた。琉が周期的に地球に向かって獣のような姿になり切なそうに泣くので、ある日思い切って何故そうなるのかと琉に聞いたそうだ。
すると琉は地球へ行きたいとだけ言ったのだ。
何かを察したミカサはかねてからナガレに惚れていたので、結婚を申し込み承諾してくれたナガレと琉を連れて、地球へ向かった。
自分の懐かしい故郷へ戻ろうとしたが、琉はどうしてもサウスエリアの方へ行きたいときかなかったらしい。
そして、俺と琉は出会った……。
「ナガレは私は人体実験にされたんだと悩んでいた。聞いたことがあった。月の研究所では時折そういうどこから流れて来たかわからない、どのように作られたかわからない精子を扱うことがあったと。私も研究所の人間に問い詰めたが、彼らも何故そのようなものが紛れ込んだのかわからないと困惑していた。ただ、一部にそういう人間を望む者もいたことは確かだ。人間としてではなく、人間を超えた更なる優秀な人間を作りたがるやつらが……。ただ、琉はそのこと以外はとてもいい子で育てやすい子だった……。でも本能的に私と血のつながりはないというのは琉は悟っていたのだろう。私もそれを言われるのは辛かったのでそのうちに琉を避けるようになってしまっていたかもしれない」
ミカサは申し訳なさそうに琉を見た。
けれど、琉は以前のような反抗的な視線をミカサに向けることはなかった。
むしろ色々なことが合点が行ったような様子だ。
「お父さん……辛い思いをさせてしまっていたのですね」
「いや、私など、お母さんの方が色々辛かったに違いない」
「でも、そんなお母さんをお父さんは支えて来てくれてたんですよね」
「私なんかで力になれてたのか……」
「なれてましたよ!」
「琉……」
俺は初めて琉の父親が琉に対して切なそうな視線を送るのを見た。例え血がつながっていなくても、もう彼らは親子なんだって思った。
結局琉の正体はわからなかったけれど、今の俺も琉もそれ以上の事を問い詰める気持ちにはならなかった。
「琉はアヤトと逆で、本能的に生きる猛獣とアルファであることから余計アヤトのことで、彼が危機的状態になったり、発情期になると反応したのかもしれない。いや、もしかしたら、今までの事を考えると、お前たちがつがいなのかもしれない……」
「俺たちが……つがい?」
「そうだと思います。俺はずっとそう思っていました」
「……琉!」
「アヤトだけだったんです。俺が猛獣のようになった時俺の思っていることが伝わったのは」
「そんなことが?」
思わずユキトが声を上げた。
「凄いね、互いのテレパシーが通じ合うなんて……つがいはそんなこともできるのか。なんだかまるで赤い糸で結ばれていたみたいだね……」
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