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第八章 運命のつがい 十五

 俺ははっとして顔を上げた。    運命の赤い糸……。  ミチルの言葉で、俺の部屋にあったあの本をミチルが気にしていたことを思い出した。  彼はあの本を読んだんだと思った。  そして自分の手から赤い糸が伸びてそれが琉に繋がっていたんだとふとそんなイメージが頭を過る。 「俺はずっとその糸が見えていたよ……」  横にいる琉が俺に微笑みかけるように呟いた。  俺はドキリとした。 「……とまでは言い過ぎかもしれないけど……俺が月にいる時から、お前が俺には見えていた……。言葉に上手くできないけれど、感じていた……」 「沼間のしたことは、途中までは正しいと思った。アヤトのことも琉のことも互いを抑え込むことでそれは倫理的に合ってると思った。だから私たちはお前たちが大きくなってから、真実を伝えようと思っていた。けれど、何かが沼間を変えたのだろう……沼間はある日から暴走するようになり、本当は血を変えることは犯罪なんだと言い出し、私たちを翻弄したよ……」 「ナガレももう納得している、そして私たちもアヤトくん……もし、そのっ、嫌でなければ、どうか……琉と……」  ミカサさんの言葉に俺は思わずユキトとミチルを見た。  二人は俺たちを見て微笑み頷いている。   「アヤト、お前のつがいは沼間ではない。宝田琉くんだ……」  空港から幾つもの船が様々な航路で飛び立っている。  そしてそれらはワープポイントからキラキラ瞬く星のように煌めくとふっと消えていく。  帰還する俺たちの乗る船は沼間たちに乗せられていたのと大きさは同じだったが、船体は丸く見るからに新しかった。    俺たちの姿を見つけたサエカとエムルが手を振りながら迎えに来た。  二人はアンドロイドで笑顔を見せることはなかったが、どこか落ち着きなくどう見てもウキウキしているようだった。整備やら俺たちの欲しいものはないかなど聞いてきて、この先もサポートする気満々のようで、そして俺たちの再会にどこか嬉しそうだった。   「アヤト、待ってましたよ! 今度は船が墜落するなんてことはありません、最新型のモデルの船を用意しましたから」 「何か欲しいものはありませんか? 五時間ほどで地球に戻れるはずですから、その間の船の燃料や食糧やデザートなど生活に必要な物を十分に積み込んで準備しますね! あ、それともトラベルモードにしてしばらく宇宙の旅を満喫しますか?」 「どうしたんだ急にお前たち……」 「私たち嬉しいんです。ずっと沼間じゃなくてアヤトは琉とつがいだったらどれだけいいかと思っていたし、お互いにそう言いかけてはそれは言っちゃいけないって……凹んでいました」 「もぅ、エムル、そんな話はもういいから、これから色々食材買い込まなきゃ、ステーキ肉はあるし、マッシュルームポテト用のじゃがいももあるわね、後はデザート用のメロンを買い足してこなきゃ!」 「サエカ、その間ワタシは給水をフルにしておきますね」 「ええ、お願いね!」  いそいそと動き回る彼らに俺たちは思わず微笑んでしまった。  俺たちの親は身の回りの準備をしてから後日地球に帰って来るそうだ。

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