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相性(3)※

焼き鳥屋で2時間ほど過ごした後、2軒目に立ち寄ったのは、魚介系の創作料理居酒屋だった。その店を選んだ理由は互いに一致した。客引きの女の子が可愛かったからだ。 いい感じにほろ酔いになった野郎2人の会話は、下品の一言に尽きた。オヤジ臭い下ネタや、真面目な性の話、過去の恋愛の話、性癖の話。店には申し訳無かったが、語りに語り尽くしたおかげで、食べた料理の味は正直よく覚えちゃいなかった。 そんな話をがっつりしたその後は、当然のようにホテルに向かった。 この間のようなビジネスホテルではない。向かったのは、ここから車で10分ほどの距離にあるホテル街の、とあるラブホテルだった。2軒目の居酒屋で、香月がよく通ったと話していたホテルだ。 ホテルまでは、タクシーを手配して移動した。後部座席に2人で並んで座る時も、香月は左側に座りたがった。特にこだわりのない俺は快諾して、右側からタクシーに乗り込んだ。 運転手は、還暦近い白髪混じりの細身の男だった。乗り込んできた若い男2人に、ホテル街まで、と行き先を告げられて、不運な運転手だと気の毒に思った。だが、運転手は怪訝な顔ひとつせず、気さくに対応した。アルコールが入ってハイなテンションで乗り込んできた野郎2人を、ただの酔っ払いだと判断したのかもしれない。職業柄、色んな客との出会いがあるはずだ。俺と香月だって、彼にとってはただの一顧客に過ぎない。彼の仕事はあくまで、客を安全に、事故なく、目的地まで送り届けることだ。彼は真っ当に、職務を遂行しているだけなのだ。 ホテル街までの約10分間、相変わらず香月はよく喋った。俺とじゃない、運転手とだ。気さくな運転手は、気を遣って俺にも話題を振ってくれた。そんな彼の人柄は素晴らしいと思う。だが俺は、振られた話題に短く答えるだけで精一杯だった。その時以外は、窓枠に肘を付いて、無心で外の景色を眺めていた。 そうせざるを得なかったのだ。 運転手の死角で、香月の手が、俺の太腿をしきりに撫でていたからだ。 利き手でない右手で、ゆっくりと、焦れったく、明らかに普通でない触り方で、往復する。 最初に触れられたその時に、一度だけ香月を睨んだ。香月が俺の視線に気づくと、目を細めてにこりと小さく笑った。俺はバックミラー越しに運転手の目線を気にかけながら、さり気なく左手で香月の手を制した。すると香月は、俺の手を愛撫するように指先を滑らせた。予想外の動きに慌てて香月の方を振り向いた時には、香月の目の色は変わっていた。 狼の目だった。 同時に俺は、羊と成り下がっていた。 俺は諦めて、逃げるように窓の外を見た。 10分。10分耐えればいい。だがその10分が、永遠に感じられるほど長かった。 再び香月の手が蠢いて、俺の内腿に添えられた。 ゆっくり、撫ぜるだけ。 それ以上のことはしない。 それなのに、ひくつく内腿の震えは止められなくて、零れそうになる吐息の代わりに何度も深く深呼吸をした。

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