｢今指2本入ってるよ｣ ｢えっ...｣ ｢実感ない？｣ ｢...ない｣ いつの間にそうなっていたのか、ほとんど痛みがないので気付かなかった。 ｢なあ、もう少し奥いれていい？｣ ｢...ん｣ 今度は何の抵抗もなく頷けた。 香月の指先が少しずつ奥に進む。さっきまではなかった圧迫感に思わず息が止まる。それを察した香月が声をかけてきた。 ｢桐谷、息止めるなよ。深呼吸してろ｣ 暗示のように低く囁かれて、こくこくと深く頷いた。 大きく息を吸う。 息を吐く。 また吸う。 吐き出す。 ｢...上手｣ 香月はそう言って褒めて、唇を背中に押し当ててきた。そうやって触れられていると少し安心した。呼吸に集中する。 ｢っ...はあ....っ、｣ だんだん、慣れてきた。 ｢今って気持ちいい？｣ ｢...まだ、わかん、ね｣ ｢そうか｣ 慣れては来たが、気持ちいいとは正直言い難い。ゆっくり中で香月の指が蠢いているのがわかった。動く度に鳴り響くローションの粘着質な音が耳にこびり付いて離れない。こちらの顔が見えないのが、今は救いだった。 ｢ふー...、｣ 大きく息を吐いた時だった。腹の奥のどこか、香月の指先が触れた瞬間に異質な感覚を覚えた。 ｢ふ、ぁっ...！｣ 意図せずあられもない声が出た。自分でも驚いて、思わず息を詰めた。 ｢お？ここか？｣ 今なんで声が出た？ 俺の身に何が起きた？ てかここって何だよ？ 聞きたいことが山積みでまたパニックになる。 ｢ちょ、ちょっと待て、香月、｣ ｢ダメ。待たない｣ ｢えっ｣ おいおいさっきまでの優しさはどこに行った？不安が増す中、また香月の指が蠢いた。それも明確な意志を持って、迷わずその場所に向かう。 ｢香月っ、い、1回抜いっ...っふあ、｣ またさっきの感覚。勝手に声が出る。気持ちいいとか、気持ち悪いとか、そういう感覚を感じるよりずっと前に、声が漏れ出す。 ｢おー、これか。見つけた｣ 何1人で納得してんだよ...！！ 振り向いて目で香月に不安を訴えたが、香月はにやりと片方の口角を吊り上げた。