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課題(4)※
「前立腺。お前のきもちいいとこ」
「ぜっ....」
前、立、腺。
頭の中にでかでかとその3つの文字が叩きつけられた。
「ほら...ここ」
くい、と指を曲げられて、香月の指がその場所に当たる。
「っんん!」
「な?わかる?コリコリしてるとこ」
「お前っ、まじ、それやめっ...あっ!ぁ...」
「声出ちゃう?ん?」
「っあ、んぅ...っ、」
やばい、やばい。
なんかわかんねえけど、声出るし、やばい。
「な、気持ちいい?」
「わかんねぇ、けどっ、...ヘン、」
「そっか、変な感じか」
必死で頷くと、ふむ、と香月は諒解した。
「よし。桐谷いいよ、力抜け」
抜けと言われて抜けるものではない。顔面蒼白になりながら香月に助けを求めると、小さく笑って身を寄せてきた。
何をされるのかと思えば、また背中にキスをされた。ぞく、と震えてもお構い無しに、香月はキスを落とす。
「よく頑張りました」
「あ、ん...」
腰に吸いつかれた瞬間、腰が抜けそうになった。
「ほら、深呼吸」
落ち着いた声で囁かれて、ゆっくり呼吸をし始める。息を吐く度に、少しづつその長い指が抜かれるのがわかる。腰が気持ちよくて、呼吸なのか吐息なのかよくわからないものになっている。だが脱力していっているのは確かで、その証拠に上体を支える腕の力は奪われ、くたりとベッドに投げ出すような格好になっていた。
「もうちょいで抜けるよ」
俺は頷きながら、呼吸を続けた。
吐息を吐く。
---大丈夫だ。
頭がぼうっとする。
---痛くない。
腰、気持ちいい。
---全く痛くない。
痛みのないことに安堵しているところに、香月が歯を立てて腰に噛み付いてきた。
「ちょっ...いや、だ、かむな...っ」
「嫌だ?こんなに俺の指締め付けといてよく言うよ」
「んんっ...ぬけ、よ、はやくっ!」
「抜こうとしてるよ?お前が離してくんねえだけ」
すると、ぐい、と再び奥まで指を入れられた。
「あ!んんっ!」
「なあ...すげえトロトロなんだけど。もう痛くないんじゃない?」
香月の指が蠢く。抜かれるとばかり思って弛緩していた身体が驚いて悲鳴を上げる。
「あっ、も、ぬくって、おま、え、」
「言った。でも気が変わった」
ぐ、と香月の指先があの場所に触れた。
「そ、こ、っあ、ぁ、やだっ、やだっ、ヘン、」
「なあ、本当に変なだけ?気持ちいいんじゃなくて?」
「わかん、ね、ほん、とにっ...あっ、あっ、やっ、」
ぐ、ぐ、ぐ、と断続的に指先がそこを擦りあげる度に、押し出されるようにして声が出る。変な感覚が、身体中に巡る。気持ちよさはほとんどないけれど、とにかく、変としか言いようのない感覚に喘いでしまう。
香月は指先の動きはそのままに、俺に覆いかぶさってきた。
ふわり。
俺の背後、頭上から、あの香りが漂ってきた。
「じゃあさ桐谷...約束して。そしたら抜いてやる」
蜜のような、砂糖水のような。
甘くて、溺れそうだ。
「練習しといて、自分で」
「れん、しゅ、っう、ん、」
「そ、練習。次は俺の挿れるから」
そんな甘い香りを纏いながら、優しい声音でとんでもない事を言う。
「だからちゃんと気持ちよくなれるように自主練しといて。俺からの課題。わかった?」
有無を言わさぬ“わかった?”に、俺は頷くことしかできなかった。
「わかっ、た、わかったからっ、ぁ、も、むり、くるしっ...ぬい、て----」
「ん。いい子」
そして一度に指を引き抜かれると、俺は力なくベッドに倒れ込んだ。ようやく訪れた開放感にほっとするのも束の間、全身の気だるさに顔を顰めた。
調子、乗りやがって。
息を乱しながら、横目でありったけの嫌味を込めて香月を睨む。当の本人は気にする素振りもなく、逆に満足そうに笑いかけられて余計に腹が立った。
「よし。じゃ、1回イっとくか」
信じ難い発言に、血の気が引いた。
「いや、む、むり、今はムリ、ムリだっての!!触るなぁ!!」
狼だなんて、可愛げがありすぎた。
こいつは、狼の毛皮を被った、悪魔だ。
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