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課題(7)

週が明けた、火曜日。 パソコン業務をしている時だった。 肩を叩かれ振り向くと、その先には根塚が立っていた。 「大丈夫かい?」 「え?」 突然調子を窺われて、俺はなんの事か検討が付かず目を瞬いた。そんな俺の様子に、今度は根塚も目を瞬かせた。 「え?って...桐谷くん全然呼んでも気づかないから」 「えっ、い、今ですか?」 そうだよ、と根塚が頷き、俺の顔を覗き込む。 「体調悪い?先週も気になってたけど」 「あ、いえ、体調はいいです。すいません、集中してて...失礼しました」 全く気付かなかった。ただただ平謝りする俺に、根塚は菩薩のような笑顔を浮かべて「気にしてないから」と宥める。 「むしろ僕の方が申し訳ないよ、面倒なこと頼んでしまったから...無理はしてないね?」 先週頼まれた仕事の件のことを言っているのだろう。根塚は気にかけてくれているが、今まで何度か似たような案件を抱えたこともあったので、なんの問題もない。 「先週の件は順調です。無理もしてませんから、安心してください。ご心配ばかりおかけして本当にすいません」 仕事は、すこぶる順調。 問題なのはもちろん、別の案件だ。 「それならいいんだけど。...あ、これ、役立てたらなと思って持ってきた資料。参考になったらいいんだけど」 使えたら使って、と彼が差し出したのは別の資料のコピーだ。 この人は本当に菩薩なんじゃないだろうか。 根塚の背後から後光が差して見えた。 「ありがとうございます。助かります」 「それはこっちのセリフだよ。ありがとう」 その後根塚は二言三言交わして、俺の元を去っていった。 「....はぁ」 職場に私情を持ち込むことはしたくないというのに全く俺は---何をしてるんだか。 ...それもこれも全部、あいつのせいだ。 ここ数日の事情が蘇り、俺はもう一度、大きくため息をついた。

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