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課題(8)

「あーーーもう!ぜんっぜんわかんねぇぇ...」 その日の、夜。 ローション片手に、俺は何度目かの“自主練”に悪戦苦闘していた。 尻に入るとか入らないとかの問題ではない。 ただ、不快感以外、なんの感覚もないのだ。 快感がないのはまだわかる。しかしこの間のような変な感覚すらやって来ないのはどういうことなのか。指が届いてないのか、それとも場所が曖昧なせいなのか。ひたすら不快な感覚が付きまとうせいで俺のモチベーションは既に底辺まで来ていた。 ここでもない、そこでもない、と自ら突き出した尻に指を突っ込んでまさぐる姿が情けなく、馬鹿らしくなってくる。高揚感も満足感も何も無いこの時間が、物凄く無意味なものに思えてきた。普通に今までしていたような自慰の方がよっぽど有意義じゃないか。 そう思ってでも向き合う理由は、1つ。 “次は俺の挿れるから” その強烈な一言が、気の進まない俺を唯一駆り立てている。 指だけであんなに窮屈で圧迫感のある感覚だったのだ。そこへあいつのそれを...。 「..............」 おぞましい光景に俺は絶句した。 これは快感のためというよりも、我が身を守るためだ。俺のメンタルを保つためだ。こんな無様な醜態を演じているのは俺の護身のためで、虚しい行為なんかじゃない、無意味なものでも無い。大丈夫だ桐谷、お前は大丈夫。何度もそう言い聞かせながらこの数日間過ごしてきた。 そうでもして正当化しないと、俺は平常ではいられなかったのだ。 俺は、根塚には相当感謝していた。 与えられた仕事を、淡々とこなす。それが今の俺にとって救いだった。目の前に仕事があれば、どれだけでも仕事の鬼になりきれる。そうやって俺は鬼になって、あの悪魔に精神を蝕まれないように抗うことができた。 「あぁー...痔にはなりたくねぇな.....」 期限とされた金曜まであと3日。 俺は仕事に全力で打ち込む。 そして、全力で我が身を守るのだ。

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