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課題提出(1)

「流石だよ桐谷くん!君に任せてよかった、ありがとう」 金曜日。 出来上がったデータを根塚に提出すると、一読した根塚は歓喜して俺の背中をパシパシ叩いてきた。 「お役に立ててよかったです」 礼をいいたいのは俺の方だ。根塚はやはり、俺にとっての菩薩だった。 「飯のひとつでも奢らせてくれな。急だけど今夜は空いてる?」 はい、空いてます。 そう言いたいのは山々なのだが...俺には今夜、もう1つ提出しなければならない“課題”がある。 「根塚さんすいません、ぜひご一緒したいのですが...今日は先約がありまして。来週の金曜でしたら...」 根塚が慌てた様子で両手をかざして俺を制した。 「ごめんごめん、つい、ホッとして。来週なら僕も空いてるから、来週付き合ってくれるかい?」 「もちろんです」 断らねばならないこの状況を恨んだ。 その元凶となっている悪魔を憎んだ。 この菩薩のような根塚を目の前に、笑顔の裏では憎悪に満ち満ちた自分がいるこの状況に、いつか罰が当たったとしても仕方がないなと思った。もしもそうなった時は、俺は喜んでその罰を受け入れよう。 この1週間、一日いちにちが一瞬で過ぎていった。 根塚のお陰で職場にいる間無心になれた。 できればまた仕事を与えてくれ。無理難題を押し付けてくれ。余計なことを考える暇を与えない程に忙しくさせてくれ。 だが仕事というのはただ与えられるだけのものではない。自分で生み出すものだ。 今回は、運が良かっただけだ。 俺は、根塚の背中を見送りながら、深く一礼した。 その時、胸ポケットの中の携帯が、ブブ、ブブ、と2度鳴った。 嫌な予感がする。 携帯を取り出し、画面を確認する。連絡を寄越してきたのは、やはり奴だった。 菩薩が去った今、奴は自由となった。 悪魔のお出ましだ。

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