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スーツと服(1)

休み明け、出勤した俺はまず根塚の元へ行った。金曜日のことをただただ平謝りする俺を、根塚は咎めることなく優しく宥めてくれた。特に電話のことを詫びると、根塚はむしろ嬉しかったと顔を綻ばせたのだ。 迷惑をかけるよりは、喜んでもらえる方がいいに決まっている。 しかし、自分で語っておきながら話した本人は全く内容を記憶していないなんて、こんなに恥ずかしいことはない。まさか俺に何と言われましたか、などと聞けるはずもなく、俺はひたすら頭を下げることしかできなかった。 「桐谷くんはいい友達を持ってるね」 いい友達、と聞いて、俺は少し緊張しながら顔を上げた。それはもちろん、香月のことだ。 いい友達と言われて悪い気はしないが、今回は素直に喜べなかった。 俺には確認しなければならない事がある。 「根塚さん、俺聞きたいことが....」 根塚は俺の言葉を遮るように首を横に振った。 「彼は本当に優しい子だ。大事にしなさい」 ポカンと口を開けたままの俺に、根塚はにこりと笑いかけた。俺の肩を叩き、「さ、今週もがんばろう」と鼓舞すると、その場を後にした。 聞くなと言われている気がして、俺はそれ以上根塚には何も尋ねることはできなかった。 それからその日の昼休憩時、俺は四十万に声をかけて昼飯に誘った。そこで四十万にも同様に詫びれば、根塚と同じような反応をされた。 俺は一体どんな風に四十万を評価したというのだろう。俺の目の前でデレデレと頭をかく四十万を見ているとそれだけで居心地が悪くなる。 今朝の根塚は何も答えてくれなかったので、俺は切り口を変えて四十万に聞いてみた。しかしそれでも結果は同じだった。 突然四十万は思い出したように携帯を取り出すと、先日の飲み会の動画を俺に見せてきた。酔った俺が写っていた。全く撮られた記憶が無い。慌てて携帯を取り上げようとると、四十万は「ダメです」と歯を出して笑ってみせた。 そうやって話題をそらされ、俺は上手く話をはぐらかされたのだと思う。 結局俺は、2人からは何も情報を引き出せなかったのだ。

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