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俺の世界の有
でももう、今の自分にはもうどうでもいいことになった。大学も、友達も、そしてこっちの有にも興味はない。だって自分には別の居場所があるから。
そこで、数日前にも大貴の世界で会った、有の妖艶な顔を思い出す。大貴の顔に自然と笑顔が生まれた。
自分の世界ができてから3ヶ月ほど経っていた。そこで有と会う度に交わった。最初はただの夢なのだと思っていた。しかし、朝、目が覚めた時に体のあちこちに残る有の感触に、これは夢ではなく、別の世界なのだと信じるようになっていた。
その世界は、その有が言った通り、大貴だけの、大貴だけが制御できる世界だった。自分が望んだことは何でも叶う。きっと望めば。金だって、名声だって手に入れることができるのかもしれない。
しかし、大貴はそんなものには興味がなかった。有さえいればよかった。大貴の世界には暗闇が広がったままで、その中に大貴と有の2人きりだったが、大貴はそれでよかった。
暗闇の中、ただ抱き合う。大貴が心の中で願えば、色々な物が形になって表れた。シャワーの中で交わりたいと思えば、浴室が2人の前に現れた。ベッドが必要な時にはベッドが、有を拘束したいと思えば大貴の手にロープが、裸の有を犯したいと思えば有が裸で瞬時に現れる。
抱き合っている時も同じだった。大貴が望むように、望むタイミングで、有が体をくねらせ、腰を動かし、声を上げた。唇を貪りたいと思えば、有から近寄ってきて、大貴の思うように有の舌が口内を這った。
ただ、その有とは毎日会えるわけではなかった。会いたいと望んで眠りに入っても。夢も何も見ず、翌朝を迎えることもよくあった。その方が多いくらいだった。
そんな時、大貴は何か言いようのない喉の渇きのような感覚を覚えた。早く夜が来ればいい。早く暗闇が訪れればいい。起きたばかりのベッドの中でそう思った。
ある時ふと気が付いた。大貴の世界で有と会える日は、現実の世界で有と会っていない日なのではないか。どんな因果関係があるのかは分からなかったが、意識して過ごす内、それは確信へと変わった。
それからは、有と現実世界で会わない日が待ち遠しくなっていった。逆に、大学で有と同じ講義があると思うだけでやる気がなくなり、その内、有を疎ましくさえ思うようになった。
邪魔するな。俺は、あっちの有に会いたいのに。
そんな気持ちが、日に日に大きくなっていった。何も知らずに、変わらず接してくる有が嫌でしょうがなかった。
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