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対峙

 それから更に何週間か過ぎていった。相変わらず大貴は、心配をかけない程度に友達付き合いをし、大学が終われば真っ直ぐに帰宅していた。  大貴の世界の有と会えない日でさえも、バイトがなければ誰とも付き合わず、家に帰ってただぼうっとテレビを見て過ごしていた。  その後も、大貴を心配した友達たちから声をかけられることはあったが大貴は適当に誤魔化し続けた。心配されても悩みなんかないし。大貴のもう1つの世界のことなど、話しても信じるわけがないし、大貴も話したくはなかった。  そんなある日。大学の昼休みに、大貴は1人、人気のない庭のベンチに座って携帯を弄っていた。最近はもう昼休みをグループで過ごすのも苦痛に感じていた。  一緒に食事を済ませるとなんやかんやと理由を付けて残りの時間を1人で過ごしていた。気遣わしげに大貴を見送る中にもちろん、現実の有もいた。前にも増して拒絶の態度を示すようになった大貴に対して、有は何も言ってはこなかった。相変わらず今まで通りの態度で大貴に接してくる。それがまた、大貴の苛々を助長した。  ふと、誰かが歩いてくる気配がして顔を上げた。その人物を認めて、大貴に緊張が走る。 「ここにいたのか」  有がいつもの笑顔で大貴に近付いてきた。大貴は不機嫌な態度で有へと尋ねた。 「なんか用?」 「うん……ちょっと、話があって」 「……何?」  大貴の世界の有のことは何でも読めるのに。この現実の有の言動は全く読めない。 「お前……最近、大丈夫なのか?」  ああ、またそのことか、と大貴は心の中で呟く。他の友人たちに嫌という程された質問。今までと同じように答えた。 「別に、何にもないよ」 「だけど……段々やつれてってるし、講義もあんま集中してないみたいだし、お前、なんかおかしいよ」 「そんなつもりじゃなかったんだけど」 「つもりもなにも、おかしいんだって。俺のこと、前よりも避けてるし。俺になんかあるんだったら言ってくれ」 「なんもないって!!」  思わず荒い声が出た。有が一瞬息を止めた。 「ごちゃごちゃ煩せーな。そんな心配するフリしてるけどさぁ、俺のことなんて、本当はなんとも思ってないだろ?? 偽善者ぶんなよ!!」  有が微かに目を見開いた。大貴はかまわず有に言葉をぶつける。 「俺にはもうお前は必要ない。お前に心配されなくても、こっちの世界でどうなろうと別にいいんだよ!!」 「こっちの世界……?」 「俺は俺の世界があんだよ。だから、もうどうでもいい。こっちの生活も。お前も」 「…………」  はっきりと、有が傷ついたのが分かった。

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