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呼ぶ声★
熱い吐息が有の口から漏れる。大貴が腰を動かす度に、有がびくりと体を震わせて、大貴を見つめた。
いつものように、欲のまま有と体を重ねていた。大きく快適なソファの上で、全裸のまま絡み合う。正面から有へと入り、唇を時々重ねながら、抽送を早めていく。
「あっ、んっ、んっ……」
有が首を振って、これ以上は耐えられないとでも言うような仕草をした。
「ヒロ……も……」
その表情に、大貴の興奮が一気に高まる。何も考えずに思い切り腰を打ち付けた。
イく。
高まる熱が大貴を絶頂に導こうとする直前。
え?
何かが、聞こえたような気がした。大貴の意識は一瞬逸れて、耳へと集中する。
何か、懐かしい響きだった。
大貴は動きを止めて、その音がもう一度聞こえないかと耳を澄ました。繋がったままの有が瞑っていた目を開け、怪訝そうな顔をしてこちらを見た。
再び、その音が大貴の耳に届いた。それが何か分かった途端、大貴は驚きに目を見開いた。
間違いない。確かに聞こえた。あれは。
『ヒロ』
有が大貴を呼ぶ声だった。向こうの世界に生きる有が、大貴を求める声だった。聞こえるわけがないのに。有が、自分を呼ぶわけがないのに。
大貴はゆっくりと有との繋がりを絶った。ソファの上の有は、事態がよく飲み込めていないような顔をして起き上がる。
「ヒロ?」
その無機質な響きに、大貴ははっとして、目の前の有をじっと見つめた。
違う。有じゃない。有の声じゃない。それはそうだ。こいつは自分が創った有の偽物なのだから。本物の有になれるわけないのに。なんでそれに気が付かなかったのか。いや、気が付いていたのかもしれない。けれど自分は本物の有から逃げて、偽物でも有を手に入れたかったのだ。
突然、出会ってからの有との色々な思い出が頭をよぎった。あんなに煩わしいと思っていたのに。話すらほとんどしなくなってしまったのに。今、頭の中に思い出されるのは、笑顔で笑い合う有との思い出ばかりだった。
会いたい。
現実の世界の、本物の有に。自分の想いが伝わらなくてもいい。自分のものにならなくてもいい。ただ、有の心からの、大貴が好きだった、あの笑顔の有に会いたい。
有。
心の中で有の名前を強く呼んだ。
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