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再会
次の瞬間。今まであった、マンションの一室が消えた。ソファも。テレビも。何もかも。再び暗闇が大貴を包んだ。裸だった大貴は、最初にこの世界に来た時と同じ、パジャマ姿になっていた。残ったのは。自分自身と、大貴の前に立っている大貴が創った有だけだった。
その有も最初に会った時と同じTシャツとジーンズ姿になって、じっと大貴を見ていた。探るように。
「……ヒロ。何した?」
「え……?」
「俺にも分からなかった。何が起きたのか」
「何って……」
大貴にだって分からない。ただ、有の名前を呼んだだけだった。大貴の前に佇む有が少しだけ微笑んで大貴に訴える。
「なあ、ヒロ。また、元に戻してよ。2人で仲良く暮らしてたじゃん」
「…………」
「これが、ヒロが望んだ場所だっただろ?」
「…………」
「ヒロ?」
有の問いかけに答えることができなかった。自分が求めていたのは、望んでいたのは本当にこの世界だったのか、明答することはもうできなかった。
有の顔から笑顔が消えた。
「……邪魔者が来た」
そう有が呟いた。後ろに誰かの気配を感じて振り返る。暗闇の中から、浮かび上がった人影を認めて、大貴は言葉を失った。
その人影は探るようにゆっくりと暗闇の中から現れた。大貴の姿を見た途端、びくりと足を止めた。
「ヒロ……?」
それは有だった。白地のTシャツに短パンを履いていた。大貴の姿を見て、驚いたように目を見開いたまま動かなかった。それから、大貴の後ろに立つもう1人の有に目を向け、口を開けて完全に固まった。
「有……どうして……」
大貴には分かる。この有は現実世界から来た有だ。なぜその有が、大貴のこの世界にいるのか。
現実世界の有は、しばらくショックで声も出せないようだったが、やがて絞り出すように大貴へと答えた。
「分かんない……。夜、寝てて……ヒロの声が聞こえた気がして……」
「……俺の声?」
「うん……。ヒロが、俺の声に、応える声」
「有の声?」
「……ヒロを呼ぶ声」
ああ、やっぱり。あの声は、本当にこの有が発したものだったのだ。
「ヒロの声が聞こえた気がして、ヒロに会いたいと思った。そしたら……気づいたら真っ暗な中に立ってた」
それは、大貴の有を呼ぶ声が有をこの世界に導いたということだろうか。大貴が強く、会いたいと願ったから。そして。有も会いたいと思ってくれたから。
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