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第23話
リクは話し声で目が覚めた。
アイツが誰かと電話で喋っていた。
リクはリビングのソファーに寝かされていた
「リク?ああ、寝とる。大丈夫・・・大丈夫や、すぐ目ぇ覚ますやろ。どうや、楽しんでるか?」
優しい声だ。
相手はソラなのはすぐにわかった。
「目が覚めたら・・・電話するように言うな。・・・ソラありがとうな、本当にありがとう」
アイツは携帯を切った。
そして、振り返り、リクが自分をじっと見つめているのに気づいた。
アイツはオロオロと視線を揺らし、何か言おうと何度も何度も口を開け、そして何も言えずに下を向いた。
それでも。
ヨロヨロとリクが横になるソファーに近付いて、リクの顔の側に跪いた。
顔さえ上げず、ただ、跪く。
沈黙が続いた。
耐えられなくなって話出したのはアイツだ。
「ソラが・・・友達と泊まっていいかって。オレの兄貴が良ければ友達と早朝の釣りに連れて行くって。兄貴の友達がやってる旅館があるんだ」
ボソボソと呟き、電話を差し出した。
画面にはソラの名前がある。
リクは電話をかけた。
「ソラ」
リクは電話の向こうに言う。
ソラにならどんな時でも話しかけられる。
「お兄ちゃん?オレ、釣りに行きたい。田中としーたも行きたいって!!いいよね」
ソラのはしゃいだ声。
ソラがこんな声を出すのはいつ以来?
仲良くなっても離れてしまう友人関係に疲れてしまったソラは最近こんな風にはしゃがなかった。
リクはアイツに目をやった。
アイツは困ったような顔をしている。
アイツは。
ソラにはやさしかった。
昔から。
ソラの為になら、とんでもなく高い樹にも登り、ソラが離してしまった凧を取ってくれた。
コイツのソラへの気持ちはホンモノだ。
「いいよ。失礼のないようにね。お礼をしたいからお兄さんの名前と住所を聞いておいてね」
リクの言葉にソラ達が歓声をあげた。
幼稚園からの幼なじみ達だ。
ソラにはあの町は特別だったのだ。
リクには違っても。
「お兄ちゃん・・・仲直りした?オレ、ずっと寂しかった。オレ、二人とも大好きだから」
リクが小さな声で言った。
アイツはリクに何を言ったのかはわからない。
でも、ソラはずっと二人のことに胸を痛めて黙っていたのだ。
ずっとずっと。
「大丈夫。楽しんで」
リクはソラを安心させるために笑って言った。
ソラは。
何も悪くない。
何も知らない。
あの時も。
今も。
アイツとリクか何をしていたのかも知らないのだ。
そして、先程まで何をしていたのかも。
リクは電話を切った。
そして、その電話を食い入るように自分を見つめているアイツに返した。
沈黙が満ちる。
沈黙はリクの友人だ。
だから、耐えられなくなったのはアイツだった。
「リク・・・リク・・・オレを許してくれ」
アイツはリクの側に膝をついたのだった。
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