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第24話

 小さな町にも秘密はある。  そんなことは少年を知っていた。  ただ、その秘密が自分を苦しめることになるなんて。  生まれた頃から少女を知っていた。  ずっと近くにいた。  手を引いて。  歌ってくれて。  あやして遊んでくれて。  ずっと好きだった。  もの心ついて、ずっと誰かと一緒にいる約束が結婚なのだと知ったなら、もう結婚するのはこの人しかいないときめていた。  年上だから。  どんどん先に大きく綺麗になっていくのを歯噛みしながら見ていた。  何もかもが、自分より先に行っていて、それを必死で追いかけた。     不思議な位気があった。    口に出さなくてもわかりあえた。  面白いと思うことも、悲しいと思うことも、怒ることも同じだった。  同じ魂が形を変えて出会ったかのようだった。  姿を見たら追いかけて。  追いかけられたら抱き止めて。  だから。   恋になってしまった  一つ違いの少女と少年。    小さな町では良くある話で。   ハッピーエンドにしかならない話。  そうなる話だったのに。    まだ自分より背の高い少女にキスをしたのは10才の時。  少女は震えてた。  少年が男であることを知って。  でも。  拒否しなかった。  受け入れてくれた。  触れ合うだけのキスだったけど  「大好き」  何度も言った言葉を違う意味をつけていった。    「私も」  少女は恥ずかしそうに言った。  それで終わり。    ここから先は大人になるまで待つだけ。  それで充分。  待つことは出来た。  だって、ずっと一緒なんだから。  両親に打ち明けた。  隣りのあの子と結婚したいと。   母親は笑った。  本気にはしてなかったけれど、どこか喜んでさえいた。  母親もあの子はお気に入りだから。  父親は笑わなかった。   父親は怯えた目をしていた。  怖がっていた。  そして。  次の日、少年は父親に連れ出され山の中のつり場でその話を聞かされたのだった。  おぞましい。  汚い話。  父親は裏切りの物語を語った。  そこから父親とはまともに話したことはない。  母親ともはなさなくなった。  黙っていることで、自分も共犯だから。  でも言えなかった。    悲しませたくなかった。      おそらく。  少女もその母親から、醜い物語を聞いたのだろう。  2人はもう。    二人きりで会うことはなかった。     なぜ魂がこんなに近しいのか。   なぜこんなに互いが愛しいのか。   その理由を知っていたらこんな場所にまで来るとはなく、二人は違う形で離れることなく互いを思いあえたのに。  でも。  もうダメだった。  知らなかったから、もう二人は入ってはいけない場所に入ってしまっていた。  ハッピーエンドへの物語は、呪いの物語となった。  呪いを受け入れて、二人で逃げてしまうには、二人は子供で、そこまでの勇気もなかった。  全ての人を地獄に落とすには。  二人は優しすぎた。  少年は苦しんだ。    だって、少女を思ってしていたから。  心で何度も汚した少女は自分の姉だった。    だけど、思わずにはいられない。  今でさえ。  苦しみながら、思いながら扱く。  そのたびに、耐えられない自己嫌悪。    離れたい。  でも隣に住むのだ彼女は。  彼女に会いたい。  話したい、  彼女の魂に触れたい、  会えない  話せない  触れられない。  それでも、少女を思って泣きながらする射精は気持ち良く。  自慰に溺れた。  死ぬほど苦しみながら。  そんな頃。  リクが少年の前に現れたのだった。    壊れそうなほど綺麗で。  繊細で。  でも。  絶対に誰のものにもならないリクが。             

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