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第40話

 リクのラインに次にメッセージを入れてきたのは恋人だった。  なぜか恋人は、遠く離れた町からこちらに向かっていた。  「何も変わったことはないか?」  恋人はそう聞いてきた。  ・・・だから、何かあったのだとわかった。  でも、リクはメッセージに返信しなかった。  ソラはリクが言われた場所に着くまでは安全じゃないからだ。  おそらく何かを飲ませられ、ぐったりしたソラを彼女の「友人達」に渡すわけにはいかなかった。  ソラは。  ソラだけは。   自分とは違う風に生きて欲しかった。  ちゃんと、出会って恋をして。  歪みなどない場所で。  閉じ込められてない場所で。  普通に。    それはリクの夢でもあった。  リクには叶うことのない。    光のような少年である恋人と初めて出会った時に思ったような。  恋人はその時すでに傷ついて、もう蝕まれていたからこそリクをえらぶしかなかったのだけど、でも、蝕まれる前のあの輝くような少年が、もし、リクを選んでくれていたら?  それは有り得なかっただろうけれど。  それでも。  それは素敵な夢だった。    ソラなら。  ソラなら。  それは夢じゃない。  傷や苦しみから誰かに惹かれることなく、純粋な想いから誰か惹かれあうことができるのだ。    それは素敵な夢だ。  夢でしかない。  リクには。   でも、ソラには夢じゃない。  傷つけてたまるものか!!  彼女から守らなければ。  ソラは住所にむかった。  車を飛ばして。   恋人はこちらに向かってる。  彼女がリクがついたなら、ソラの居場所を恋人におしえてくれるだろう。  恋人はソラを助けてくれる。  それが一番大切だった。  ソラを傷つけない。  ソラにだけは。  リクは彼女の元へむかった。  傷ついて歪んで、苦しんで。  それはリクも彼女も恋人も同じなのに  だだ一人だけ、取り残されたままだった彼女の元へ。  恋人が今もなお。  愛し続けている、女の元へ。  知ってた。  恋人の中から彼女は消え去ることはないことを。  だからこそ。  行かなければ。  終わらせなければ。    どうやって?  それはリクにもわからないのだけれど。        

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