41 / 51
第40話
リクのラインに次にメッセージを入れてきたのは恋人だった。
なぜか恋人は、遠く離れた町からこちらに向かっていた。
「何も変わったことはないか?」
恋人はそう聞いてきた。
・・・だから、何かあったのだとわかった。
でも、リクはメッセージに返信しなかった。
ソラはリクが言われた場所に着くまでは安全じゃないからだ。
おそらく何かを飲ませられ、ぐったりしたソラを彼女の「友人達」に渡すわけにはいかなかった。
ソラは。
ソラだけは。
自分とは違う風に生きて欲しかった。
ちゃんと、出会って恋をして。
歪みなどない場所で。
閉じ込められてない場所で。
普通に。
それはリクの夢でもあった。
リクには叶うことのない。
光のような少年である恋人と初めて出会った時に思ったような。
恋人はその時すでに傷ついて、もう蝕まれていたからこそリクをえらぶしかなかったのだけど、でも、蝕まれる前のあの輝くような少年が、もし、リクを選んでくれていたら?
それは有り得なかっただろうけれど。
それでも。
それは素敵な夢だった。
ソラなら。
ソラなら。
それは夢じゃない。
傷や苦しみから誰かに惹かれることなく、純粋な想いから誰か惹かれあうことができるのだ。
それは素敵な夢だ。
夢でしかない。
リクには。
でも、ソラには夢じゃない。
傷つけてたまるものか!!
彼女から守らなければ。
ソラは住所にむかった。
車を飛ばして。
恋人はこちらに向かってる。
彼女がリクがついたなら、ソラの居場所を恋人におしえてくれるだろう。
恋人はソラを助けてくれる。
それが一番大切だった。
ソラを傷つけない。
ソラにだけは。
リクは彼女の元へむかった。
傷ついて歪んで、苦しんで。
それはリクも彼女も恋人も同じなのに
だだ一人だけ、取り残されたままだった彼女の元へ。
恋人が今もなお。
愛し続けている、女の元へ。
知ってた。
恋人の中から彼女は消え去ることはないことを。
だからこそ。
行かなければ。
終わらせなければ。
どうやって?
それはリクにもわからないのだけれど。
ともだちにシェアしよう!