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第45話
彼女はリクはの手を濡れた女の場所にあてがった。
リクはその場所に怯えた。
彼女は笑った。
リクは女性に触れたことがなかったから。
でも、何度も何度も溶かされ、高められた身体はそれくらいで静まることはなかった。
彼女はリクの性器を指で扱く。
そしてリクの中のディルドを動かす。
リクは背中をそらして、声を上げる。
「これ、あたしに挿れるで・・・」
彼女はうっとりと言った。
「何人ともしてきた。でもな・・・欲しいと思ったんは・・・リク、あんたのだけや」
彼女は言った。
そうだろう。
彼女は弟を欲しがれない。
こんなになっても、この姉と弟は、互いの肉体を求められない。
リクを通して抱き合うことしかできない。
二人はリクを通して抱き合っていた。
リクこそが二人の肉体をつないでいた。
彼女は心からリクを愛していた。
だって、リクだけが、彼女を繋ぐのだ。
「あたしのモノになって、あたしと生きよう。あの子があんたにあげたモノ全てさ あたしにだってあげられる」
彼女の言葉は本気でそうなのだろうと思った。
彼女は今度は恋人を地獄に落とすつもりなのだ。
それは彼女にとってはそれが愛なのだ。
恋人は苦しみ、でもその地獄の中で彼女を見つけ出すだろう。
この二人は。
どこまで行っても。
互いしかみていない。
いや、確かにリクを見つめて愛してさえいるのかもしれない。
でも。
哀れで悲しい・・・
リクは快楽と欲望の中、それでもそう思った。
逃げることしか出来ない二人。
互いに向き合うことさえ出来ないのだ
でも、
でも。
リクの中で何かが叫んでいた。
のしかかり、自分の中にリクを沈めようとする女、そうしながも、リクの中にあるディルドでリクを貫く女をみながら、リクはそう思ったのだ。
「あなたにあの人は渡さない・・・」
リクの言葉は鋭かった。
リクは生まれて初めて人を攻撃するために言葉を発した。
薬の効果は弱くなり、リクの手足は動くようになっていることにもリクは気付いた。
「たとえ、あなたしか見ていないとしても・・・あの人はオレのものだ」
リクは彼女を下から見つめた。
今は声が出る。
だからそう言った。
それはセックスの時の嬌声ではなかった。
彼女は驚いたようにリクを見る。
リクを跨いで自分からリクの性器を入れようとした姿勢のままで止まる。
苦しみ、リクを支配し、リクを通して弟を犯していた女。
哀れな女。
その愛をどこへもやれない女。
哀れさと、同情と、それでも愛されていることを妬ましいと思ってしまう心をリクは感じた。
「オレを通してあの人に抱かれたいの?でも・・・無理だよ。ここからあなたを抱くのは・・・オレだから」
リクは自分から女の腰に手を伸ばした。
これ以上、自分の中の恋人を彼女に触れさせることなど出来なかった。
恋人はリクのモノだった。
誰を愛していたとしても。
それはリクが決めたこと。
そして、恋人が決めたことだった。
「あなたは、あの人に触れたりなんか出来ないんだ。あなたが触れて抱かれるのはオレでしかない」
リクは彼女に言い切った。
彼女の驚いたように見開かれた目から、涙が零れた。
透明で、悲しい涙が。
でもリクはゆるさなかった。
だから、彼女の腰を掴んで自分へと引き寄せた。
彼女はリクに強引に入られ、声をあげた。
彼女の中は暖かく、そして悲しかった。
リクは眉を寄せた。
初めての感触の鮮烈さと彼女の悲しみを感じて、それに達してしまいそうになるのをこらえた。
彼女は声をあげた。
それでも腰を自分からふった。
そしてリクのモノを絞りとろうと締め付けた。
彼女は泣きながら動いた。
今までの陶酔はどこにもなかった。
快楽はあっても。
彼女は・・・今、ただリクとセックスしていただけ。
沢山してきた男たちとのセックスとそれは変わらない、ただの肉体の交わりでしかなかった。
リクもわけがわからないまま、声をあげて、下から突き上げる。
後ろに挿れられたままのディルドが快楽を増強する。
蠢き締め付け、こすりあげられる、彼女のそこは信じられない位気持ちよく、でも。
それは単なるセックスだった。
彼女への同情はあった。
そして、彼女を傷つけたいという想いも。
愛しさにも似た切なさも。
でも、彼女に刻み込んだ。
奥深くを貫きながら。
「あの人・・・は、オレの・・・モノだ・・・!!」
そのことを。
リクは歯を食いしばりながら呻き、そして、放った。
彼女は一番奥でそれを受け入れ、背中をそらし、痙攣した。
彼女が飛ぶ。
リクも飛ぶ。
気持ち良かった。
でも。
人を刺した後のような後味の悪さしかそこにはなかった。
彼女が泣きながら身体を離したから余計に。
リクのモノで汚れた性器から、リクの性器を抜いたから、余計に。
犯されていたのはリクだったのに、まるで彼女を犯してたみたいだった。
「・・・あたしだけ。あたしだけ・・・一人ぼっちなんや」
彼女がリクの隣で泣き崩れた。
その声が突き刺さる。
リクは困った。
でもどうすれば良かったのかわからなかったから彼女を抱きしめた。
「あなたにも誰かが現れる」
そう言った。
まだ声は出た。
「いるわけないやろ、他の誰かを愛していても自分のモノやと言うてくれるようなアホ。そんな壊れた人、あんたくらいやろ・・・」
彼女はリクの胸で泣いた。
リクは何も言い返せなかった。
リクは壊れていて。
選択肢は最初から一つしかなかったのは確かだったこら。
愛するしかなかった。
他にはないのだ。
「なんで・・・あたしやなかったの?リク・・・」
彼女はすすり泣く。
彼女の方が先にリクに出会っていたなら、リクは彼女を愛しただろうか。
リクにはそれはわからない。
リクがであったのは、あの少年。
恋人だったことだけが・・・事実だった。
リクは疲れきって目を閉じた。
彼女の体温は恋人に似ていたけれど、今はただリクと寝た女のものだと認識できた。
リクは眠った。
とにかく。
今は。
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