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第47話

 恋人は彼女が吸った跡を吸った。  彼女の跡を追うように。  リクの舌を貪り吸った。  彼女の唾液の味を知ろうとするかのように。  彼女と恋人はやはり似ていた。  どちらにも抱かれたからこそ、わかること。  彼女が言うように、二人は同じモノだった。  無理やりふたつに別れさせられたモノなのだ。  お互いを求めずにはいられない。  恋人は夢中でリクの乳首を吸う。    彼女と同じように。  リクは恋人の頭を抱いた。  切なかった。  恋人は今。  リクを通して彼女とつながっている。  でも。  リクは与えた。  哀れな姉と弟を救ってやらなければならなかったから。  でも、同時に恋人は激しく嫉妬していた。  リクの身体を抱いた姉を憎んでいた。  「オレのや。オレのやのに」  血がにじむまで噛まれた。  でも。    それでリクはイった。  もう薄い精液はそれでも出た。  「オレの・・・オレのリク・・・」      苦しそうに恋人が唸る。  それでも恋人は彼女の跡を辿らずにはいられない。  リクの脚の付け根を吸い上げ、リクの柔らかく綻んだ穴を中までなめあげる。  彼女がそうしたと、恋人は確信していたし、そうだった。  「中まで突っ込まれて可愛いがられたんか」  苦い声。    リクは頷いた。  彼女はリクの奥まで確かめたのだ。  恋人が愛した場所を。  恋人はリクのまた緩く立ち上がった性器を舐めた。  味わうように。  もうとっくに流された彼女の愛液があるかのように。  「ここを挿れたんか、アイツの中に」  恋人の声は苦くて。  でも、焦がれるようでもある。  リクは頷いた。  恋人は夢中でリクのモノをしゃぶった。  味わった。  彼女のソコを知ろうとするかのように。    そして同時に嫉妬で泣いていた。    「オレのやのに、リクはオレの・・・」  恋人は吠えた。  嫉妬に焼き尽くされて。  でも、そこを味わうことを止めようとしなかった。  リクが何度達しても。  リクは彼女に恋人に貪られつくして、死ぬのかもしれないと思った。  でも、悲しくて苦しくて、気持ち良かった。  「リク・・・許して、リク・・・リクだけなんや」  恋人は泣きながら、リクの中に入ってきた。  リクは虚ろにぼんやりと。  でも、自分から恋人を受け入れた。  恋人は彼女を抱いていた。  それをリクも恋人も、そしておそらく彼女も知っていた。  彼女の代わりでなく。  彼女を。    だから恋人は絶対に呼べなかった女の名前を何度も呼び続けた。  リクの中で擦り、貫き、揺さぶりながら。    彼女を恋人は抱いていた。  リクは、その名前を胸に刺さらせながら、でもそれを許した。  レクは恋人に。  彼女に。  互いを抱かせてやったのだ。  自分の身体をつかって。  彼らの望みを叶えてやったのだ。  本当の地獄には落ちることのできない彼らを、自分の肉体で救ってやったのだ。  リクは弟を、ソラを愛している。  でもソラを抱くことも抱かれることもない。  それは大切な感情だ。  リクとソラは繋がっている。  呪われた姉と弟と同じように。  同じ魂がある。  でも、そうはならない、だからこそ、リクは恋人を彼女を救いたかった。    彼らは超えたくなかった。   それが大切なものだから。  だからこそ。  苦しんだのだ。  「全部あげる」  リクは恋人に全てを与えた。  自分の身体を利用する事さえ許した。  でも、それは。  「これで君はオレだけのモノだ」  激しく揺さぶられ、他の人の名前を呼ばれながらリクは叫んだ。  リクは自分を傷つけて、それでも。  この二人の恋を成就させ、終わらせたのだ。  恋人は彼女の奥深くに放った。  リクを通じて。  恋人は罪悪感に叫んだ。  人を殺したような声だった。  そして、それは・・・。  本当に何かを殺した声だったのだ。  リクも殺した。  そして、殺された。  胸から見えない血を流しながら、リクは恋人に微笑んだ。  やっと。  やっと。  君を本当に手に入れた。  恋人はその微笑みを見て、慟哭した。   リクの心を引き裂いたことに。  彼女との愛が終わったことに。  リクの中にいながら、恋人は泣き叫び続けた。    リクは目を閉じた。   終わったから。  もう、終わったから。  眠ろう。  体力は一ミリも残っていなかつた。      

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