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第4話
「どこもかしこもしっとり濡れてとても綺麗だ。水の精霊みたいだ…」
耳元で扇情的に囁かれ、涙の膜が張った目元から涙が一滴、こめかみからシーツに落ちたのが分かった。
確かめる術はないが頬の紅さは自覚している。両手をどこに置いていいのか分からなかった。しばらく空中を両手が彷徨う。最後の下着の中に手を入れられ、先端ではなく、くびれを二本の指で挟むように上下に扱かれて・・・堪らず学生服の硬い布地に包まれた広い背中に縋るようにしがみ付いた。
雅浩は右手を輪にして下半身の茎を上下に動かす。それがたまらなく気持ちがいい。
左手はポツンと尖った胸をさらに育てようとゆるゆると円を描いていたかと思うと急に弾くような動きに変える。背筋がぞくぞくと震えた。悪寒のような感じだが、その熱が腰に淀んで行くのを自覚した。もう耐えられない…そう思って禁を放とうとした瞬間冷水を浴びせかけるような言葉が耳に流れ込む。
「女と違って大きくも紅くもならないんだな…やっぱり。しかし、充分胸でも感じているんだろう?」
「聞く…なよ…。そんなコト。」
「生意気なコトを言うと、ずっとこのままだ」
何だか経験豊富そうな態度にカチンと来た。
「もう…いい。後は自分でする」
そう言って背中から手を離そうとした。
「おっと、ここで逃げられたら、もうこんなコトはさせない積りだろう?それは困る」
あくまでも自分1人が乱れさせられているのが悲しくて、でも、止めて欲しくないというジレンマに襲われた。
何故だか彼の掠れた声をもっと聞いていたいような気がした。背中に回した手をそのままにしていた。
嬉しそうに笑う顔が間近にある。彼はかすかに眉間にシワを寄せている。それが雅浩の欲望のせいだと思えればいいのに・・・と下半身を愛撫されながら思った。
「凄いな、もうこんなになっている…」
先端部分に触れた右手が、千秋の目の前に突きつけられる。手首まで滴っているのは、千秋が零した恥ずかしい液体だ。
「逝ってない…んだろ?それなのに…」
「知るかよっ…」
羞恥に耐えかねて枕に顔を押し付ける。自慰は当然したことがあるが、こんなになったのは初めてだ。
「知っているか?男同士がどこを使って繋がるか…?」
知識としては知ってはいたが、自分の身に起るとも思えず…良くある猥談として聞き流していた。
が、この状況だとそこまでされるかもしれない。そう思うと、恐怖心が半分、雅浩に滅茶苦茶にされたいという欲求が半分と言ったところだ。でもそんなことは口には出せない。
「し、知らないっ!」
「そうか、キスも知らない千秋ならそうだろうな…」
千秋の前を弄る雅浩の指の速度を速め、自分の絶頂を促そうとしてくれる。その度ごとに千秋は彼の黒い学生服の背中をやるせなくまさぐった。
「あ、もう…」
「遠慮しないで逝けよ…」
そう言うと、先端部分もぐるりと執拗に撫で回す。胸はいつの間にか彼の唇が当てられ、時々当る舌の熱い感触にこちらの部分も体温を上昇させ、汗が身体中を包み込んだ。
「う…逝くっ」
白濁した迸りを雅浩は手で受けると、満足そうに微笑んだ。
「では次は…」
意味深に笑う雅浩は欲情を露わにしていた。弛緩した頭と直接当たる雅浩のモノででそのことを認識する。
雅浩の掌には自分の白濁が堪っている。
その液体の力を借りて、彼の長くて骨ばった指が、千秋が自分でも直接触ったことがない場所に触れる。
頭では分かっていたが、実際は…?と思う間もなく身体中が弛緩している隙を捉えて彼の中指が自分の白濁を纏って入って来る。異物感は当然あったが、予想していたほどではない。
彼は比較的浅いところで留まり、上部を探るように動かしている。ある一点を強く押された時、頭の中がホワイト・アウトした。
「あぁっ!そ、そこは…ダメっ」
そう言う自分の艶かしい声をどこか遠くで聞きながら二回目の絶頂を迎えた。
身体も心も弛緩したような心地よいまどろみの中に居ると、彼の顔が、お互いの睫毛が触れそうなほど近くにあることを知る。
雅浩の瞳には情欲と満足げな表情、そして何故だか分からないが…孤高とでも名付けたい表情も浮かべている。
その孤独を少しでも希薄させたくて、達したばかりでだるい上半身を起こすと、腕を掴んで千秋からキスをした。
自分でも稚拙だろうと思うキス。それでも雅浩は笑ってくれた、満足げに。
「なぁ、前立腺は悦かっただろう?あそこをもっと太いもので擦られたらもっと深い快楽が得られる」
――そんな快楽を知ってしまえば、もう以前は充分満足していたような自慰では満足出来なくなる。けれど、あれは本当に悦楽だった、他人にしてもらう禁断の…――。
ジレンマが襲う。それを見越したように、千秋が最後に身につけていたもの――当然放ったもので滅茶苦茶だ――を苦労して脱がし、シャワールームへと放り込んだ。なすがままにされているうちに、決意が芽生えてきた。
――この男に全てをさらけ出すのもいいかも知れない――
「いいぜ、来いよ。但し、痛いのは嫌だ」
覚悟を決めて、うつ伏せになる途中、フト時計が見えた。コトの最中は時間など気にする余裕はなかったのだが……この時間は、マズい。
寮生全員がもうすぐ自習室での自習を終え、自室に帰ってくるまでそんなに時間がない。
「雅浩、そろそろ自習時間が終わって両隣の部屋にも人が来る」
雅浩は眉を顰めると、千秋の白い尻を開いた。
「陶器のような白い肌触りの中に紅い蕾が慎ましやかに守られている。ところどころ真珠の珠が散っているな」
「おい、だから、時間がっ。こんな時に、詩人のようなコトを言うな!」
「ああ、分かっている。しかし、これで止めたら後で辛いのは千秋だ」
そう言うと、歯ブラシやシェービングクリームを置いてある洗面所の一画から薄いピンクのハンドクリームのビンを選ぶ。
「千秋はこれがこういう方法で使われることは知らないだろうな…」
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