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第5話
雅浩はベルトを外し、繋がるための最低限の場所を出した。それは感じている証に上を向いている。ビンのフタを外し、千秋には大きく見えるものにたっぷりと塗りこんだ。その後、指でクリームを掬うと千秋の秘められた場所にも挿ってきた。
眉を顰め「気持ちが悪い」と言うと、フッと笑い、上向きのある一点を強く抉る。
「いいっ!そこっ!もっとっ!」
理性に反して口が動く。二本目、三本目が挿ってくると、千秋の惑乱はひどくなるばかりだった。
背中に浮いた汗を飛び散らせながら
「力を抜いていろ…最初は少し痛みを感じるハズだが、それをやり過ごせば、ソコを突いてやれる」
雅浩の言うとおりだった。亀頭の部分は確かにキツかったが、そこを通過してしまうと後は比較的楽に受け入れることが出来た。熱を持つほど、時間を忘れるほど、前立腺を擦られて、自分でも信じられない身体の動きがある。あの場所が「もっと…」というように痙攣するのだ。
「もっと…中…に…」
羞恥心を辛うじて抑えこんでそう強請った。彼は額に汗を滲ませて口元を弛めた。
「無理だな…」
「な…ぜ…?」
あまりのセリフに涙が更に零れた。
「皆が部屋に帰って来る音が聞こえる。この部屋は、壁も薄そうだ。千秋が構わないのなら続行するが…」
意地悪なセリフに雅浩を睨みつけた。が、涙と欲情で濡れた瞳には迫力がないことも分かりきってはいたが。
「夜中、2人きりになれるところはないか?」
身体を離しながら、耳元で囁かれた。その声すら、背筋が震える。身体の中に有ったモノが無くなる空虚さが心細い。こんなことは初めてだ。敢えて事務的な声を出そうと努力する。
「学校の中なら、誰も居ない。寮の管理人や宿直の先生は学校内部を調べたりはしない。入り込んで悪さをする生徒はこの学校には居ないから。寮生なら抜け道も知っている」
「では、夜中に教室…いや、机じゃ心許無い。視聴覚教室に忍び込もう。パジャマでいいのか?」
密会の計画を立てられているのだと気付き、紅くなった頬がよりいっそう紅に染まる。
「いや、忘れ物を取りにきた…ということにするなら、学生服の方がいい」
「分かった。今の時間はパジャマなんだな?」
「いや、オレはいつもTシャツで寝ているが…」
枕元にキチンと畳んだTシャツの方に視線を向けた。
「厚手のパジャマにしろ。就寝時間までは自由時間なのだろう?どうせ千秋のことだ。誰かが話しにこの部屋に来る」
窓を大きく開け放って、その上、○ァブリーズまで部屋に撒いている雅浩の命令口調にムッとした。
「何故、Tシャツじゃだめなんだ?」
「その白いTシャツでは胸の尖りが隠せないからだ。それに、つい悪戯したくなる」
近付いて来た雅浩は、胸の淡い桃色に歯を軽く立てた。それだけで千秋の背中はビクビクと反応してしまう。
「その感じやすい胸を他の誰にも見せたくない」
もう、何も言い返せなかった。シャワー室で自分が零したいやらしい液体を洗い流すと言われたまま厚手のトレーナーを着た。すっかり感じるところになってしまった箇所を布地が通り過ぎる時は、黙って上を向いた。そうでなければあらぬ声を立ててしまいそうで。
「首筋も白くて細くて綺麗だ。吸い付いてしまいたくなるが…痕を残すと流石にマズいだろうな…」
「制服を着て見えるところに痕をつけたりすると絶交だぞ!」
真剣に言ったつもりだったが、雅浩は楽しそうに咽喉声で笑っている。本当に楽しそうに笑う時はこんな風に笑うのか?と意外に思う。今日初めて会って、笑顔も見てきたが、どこか翳りのある笑顔だった。それが今はその翳りが払拭されている。
就寝時間までに、千秋の友人や雅浩と友人になりたいという寮生が次々と部屋に来たが、千秋は、「その後」のことが気になって気もそぞろだ。
「あ、この部屋、何か良い臭いがする」
「臭い?」その言葉に絶句する。千秋は随分乱れたし。白いモノもたくさん零した。本当なら独特の臭いが部屋に籠もっているハズだ。
「ああ、どうも、自分の空間は匂いも自分の嗅ぎ慣れたものの方が落ち着くし集中力も増すんだ、だからこれを撒いた」
雅浩の落ち着いた声がする。その尤もらしい言い訳にその場に居た数人が感心したように言う。
「流石は元N校生だ。しかし、勉強は自習室しか出来ない規則だぞ」
「それでもベッドの中で単語を覚えたりはしないのか?」
「それはそうだ…」
一堂は笑ったが、千秋はあの臭いを消すためだけに使用したなと殆ど確信していた。誰にも気付かれないように感謝の眼差しを送る。雅浩はすぐに千秋の視線に気付き、肩を竦めた。
就寝時間5分前の鐘が鳴り、皆自室へ引き取っていく。電灯が消され、点いているのは、ベッドの横の小さい明かりだけだ。それぞれのベッドに横たわる。沈黙が流れる。
沈黙に耐え切れなくなったのは千秋の方だった。
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