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第9話(R15)
「とは言っても、2つ程、条件がある」
と、花下は言い出した。
条件つきと言われて、他の者なら多少面倒くさいと思うかも知れない。
だが、水上はそんな条件などないに等しかった。
「僕にできることであれば、いくつでも条件を言ってください」
「ふっ、意外に男前だな。水上は」
まず、花下が水上に課したのは『またこの談話室に来て、話し相手になり、水上の古文と漢文のノートを見せること』だった。
「他の教科はまだ何とかなりそうなんだけど、古文と漢文はお手上げなんだわ」
ちなみに、花下の留学先はオーストリアで、英語圏の国ではなかったが、国内外から英語の話せる留学生が来る学校で、英語での生活でも問題なかったという。
「え、でも、古文と漢文なら僕より土中の方が……」
水上としても、決して古文や漢文は不得手な教科ではない。
だが、水上の寮の同室である土中は中間、期末と水上より上の成績を修めていた。
「馬鹿だな。水上のが良いんだよ」
花下はくすりと笑うと、水上の心拍数が上がりそうになる。
「そんな、良い声でセクハラめいたこと、言わないでくださいよ」
「セクハラめいたって……どっかのリーマンかよ。まぁ、ノートは水上のヤツしか受けつけねぇから」
それで、2つ目の条件は……
「2つ目は俺に手を出せるのは俺が寝ている時だけ」
「寝ている時だけ?」
「非常に分かりやすい相槌で助かるわ。そう、俺が起きたら、途中でも終わり」
睡姦をゲームにってヤツだな、と飄々と言って退ける花下に、水上は問う。
「そのゲームは1回だけしか挑戦できないんですか?」
「ふっ、本当に変わり者だな。水上は」
花下は笑うと、笑いツボが押し潰されて壊れてしまったように笑う。
「そんなに笑わなくても良いじゃないですか」
「わりぃ、わりぃ。水上が条件を破らない限りはcontinue可能だ。どんどん再挑戦してくれ」
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