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第15話

「本当に家に帰らなくて良かったのか?」  8月13日〜8月15日。  所謂、お盆休み中に閉まる碧葉学園高等部の寮を出て、花下と水上は隣県のホテルにやって来ていた。 「部活の合宿ってことにしました。まぁ、部活に行ったのは2回くらいで、合宿自体も7月だったんですけど」 「へぇ、水上って何部なの?」 「『真夏の日の秘密基地部』ですね。まぁ、適当にダンボールとか木材とか布とか集めて、秘密基地を作って、基地に篭って、好きなことをひたすらやるって部なんですけどね……春でも、秋でも『真夏の日』だそうです。って、先輩こそ良かったんですか? 僕も一緒になんて……」  『真夏の日の秘密基地部』の話をそこそこに、水上は花下に聞く。  いつもの制服姿とは違い、黒いハットに、独特のストライプのシャツ。シンプルなデザインのリングのついたネックレス。ターコイズをあしらったやや太めのベルト。それに、蜘蛛の巣と蓮の花がアクセントになった細めのパンツ。着こなしはやや奇抜で人を選ぶが、右側だけ長い襟足に、背が高めだということもあり、不思議と花下には似合っていた。 「馬鹿だな。お前が良いなら良いんだよ」  花下は被っていたハットを深く被ると、水上の肩を叩いて、笑う。  青い夏の空は永遠のように目に映るが、夏は確実に過ぎ去り、いかに隣で笑っていたとしても、その人物は陽炎のように消えるのだ。

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