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第20話
「やっぱ、ちょっとだけ外へ出ても、暑かったな」
本日2度目の風呂に入り、バスローブに着替えた花下と水上はテーブルの片面ずつ使い、いつもの談話室でのルーティンをする。
「(今日は王冠型のデザインか……)」
水上は世界史の穴埋め問題をしながら、花下の手元を見る。
王冠は王冠でもいつかのトラッドに似合うもの、格式めいたものよりは少し遊び心があるデザイン。
トラッドを得意とするブランド『TAKAYA KOKI』ではなく、イリュージョ二ストの吾妻叶人が好みそうなものだった。
「(やっぱり、デザインを描いているこの人はかっこいい)」
胸が熱くなるような、痺れるような感覚。
「(いや……いつも、いつでも、ズルいくらいかっこいい人。僕なんかが触れるなんて叶わない人)」
水上は花下に伸ばそうとした手を制すと、
談話室とは違い、クーラーが効いた部屋。時計の針はあっという間に、23時、0時、1時と進んでいく。
「やっぱり、クーラーあるのと、ないのとじゃあ全然、違うなぁ」
花下が「でも、そろそろ寝るか」と言い、水上の肩を叩く。
確かに、ルーティンである花下の隣でやる自習をやり始めて、3時間以上が経過している。必死に繋ぎ止めていた集中力は千切れて、バラバラになりそうだった。
「ええ……キリの良いところまでやったら、僕も終わります」
「そうか……じゃあ、先に歯でも磨いてくるわ」
「ええ、そうしてください」
花下が眠った時、水上のラストチャレンジ、ラストゲームが始まる。
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