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第26話
こうして、水上と花下の、世にも奇妙な睡姦ゲームは終わった。
「花下さん、おはようございます」
花下が起きる前に手紙を残して、部屋を出ていこうとも思ったが、世界の誰が何と言おうと、花下は眠っていたのだ。一方的に、ゲームを終わらせて、花下の前から消えるのはフェアではないと水上に思った。
「(やり過ぎだって殺されるかな? それとも、同意じゃないって殺されるかな?)」
どちらにしても、花下に殺されるとも思ったが、花下の反応はいつも通りだった。
「今日の飯はホテルのルームサービスにしようか。外だと汗で服もドロドロになんし、ノート、貸してくれてるから好きな教科、教えてやるよ」
それから、2日間はいつものルーティンにプラスして、花下先生の講座が開講されていた。
「あー、ここはこれとこれと、できりゃあ、これ、覚えてたら、7割は大丈夫だから」
花下の字は独特なので、主に教科書や参考書なんかを見て、口頭で要点を教えていくのだが、本当に数を絞っているので、水上にも覚えたり、応用したりできそうだった。
「確かに全部、覚えられるなら水上のやり方が100点、取れるし、1番良いんだろうけどな。テストで点数が低けりゃ、嫌でも置いて行かれる」
「はい」
「大丈夫。水上も碧学、受かってんならやりゃあできる筈だ」
花下は水上の肩を優しく叩く。
こわいくらい、いつもの花下に、水上はぎこちなさを隠しながら返事をした。
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