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第31話
花下の、水上と呼ぶ声が優しく響く。
いや、花下と出会った時から、花下に無理矢理触れた時でも、花下が水上の目の前からいなくなった時でさえも、花下は愛しむように自分の名を呼んでくれていた。
「好き……です。花下さんのっ、ことが、っ……」
例えるのならそれはいつかコップに注いだ緑茶がなみなみと注がれて、静かに溢れ出すように、水上は上擦りながら口を動かす。
「伝える日なんて一生、来ないと思ってたし、もし、伝えることがあっても、花下さんのように、かっこよく伝えたかったのに」
花下とは違い、物凄くかっこ悪い。
花下のように、ひどく余裕がない。
でも、水上はもう取り繕ったり、誤魔化したりことはできなかった。
「かっこいいって……大丈夫。水上は花下さんってヤツよりかっこいいし、男前だよ」
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