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第4話

「黒田、痛い。離して」 「……」 「陽!!」 名前を呼ぶと頭を撫でられ、ついでに頬にチュッと生暖かい感触。日常茶飯事すぎて慣れたが、それでも毎回不快で顔を顰めてしまう。 「悠ちゃんは可愛いね〜。さすが俺の番!24時間ずっとそばにいたいな」 恋人気取りだが、番でもなければ恋人でもない。 βとαで運命の番になれないなんて、黒田も理解しているはずなのに懲りない。 ただ関係に名前をつけるなら元幼馴染み。 ほとんど記憶がないほど小さい頃、隣に住んでいたらしい。そしてこいつはなぜか俺を追いかけて1人でこっちに戻ってきた。 さすがに隣の家ではないが、徒歩数分の距離のタワーマンションに住んでいる。生意気すぎる。 「そもそもお前は1個下なんだから側にはいれないね。残念だなー、それじゃ」 今度こそ逃げようと思うと毎度恒例、手を掴まれて恋人繋ぎにさせられる。 「悠ちゃんがΩだったらいいのになぁ。すぐガブっとして、あんなことやこんなことしたい。発情期とか最高なんだろうなぁ」 こいつのムカつくところのうちの一つ。こいつはαだ。だから同級生さえも、教師でさえも逆らえない。厄介すぎる。 神様なんて信じないけど、こいつをαからβに変えてくれと常々祈っている。 「早く運命の番を見つけるんだな。最高に気持ちいいんじゃない?なんなら紹介しようかΩの知り合い。女と男どっちでも紹介できるよ」 「悠」 強く手を引かれ、陽の顔がドアップになる。あー、これは怒ってるやつだ。面倒臭い。 陽はすぐ怒る。それは陽から離れようとするとき。 正直なんでそんなに執着するのかわからない。運命の番にはなれないし、子供だって出来にくいし、出来たとしてもβの確立が高い。わざわざβを選ぶ意味がわからない。 黒田という名前とこのオーラ、見た目で大体の人は理解する。あの大手企業の黒田という一族を。 例にももれずこの黒田もそうだ。黒田家はαが生まれやすくするために、代々βとは結婚しない。

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