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第2話
後ろからの視線を感じつつ廊下を進み突き当たりのドアを開けると、エアコンの涼しい風と共に両親が出迎えてくれた。物腰柔らかなふんわりとした雰囲気の父は、ソファから立ち上がり僕に歩みよる。
「暑い中、歩かせてしまって申し訳なかったね。」
そして、
「紹介前に会ってしまったようだけど…これは息子の海。君と同い年なんだけど、これからよろしくね。」
いつの間にか父の横に並んでいた奴を紹介した。
「……深月…です、よろしく」
海と目を合わせるのがとてつもなく気まづく俯き加減で挨拶を返す。
「こちらこそ〜」
にやにやしている奴が何を考えてるのか全くわからず、自然と額からダラダラと汗が伝う。エアコンの風など感じないほど全身が熱くなっていくのを感じる。脳内では、奴に対して弱みがありすぎる。こんな所で「あのこと」をバラされでもしたらもうここには絶対にいられるはずはない。そんな思考しか無くなっていた。そしていても立っても居られず、
「あの!!へ、部屋の整理させてもらいますね!」
思わず予想以上な大きな声がでた。しかも声が裏返ってしまった…。その恥ずかしさのせいか焦燥のせいか、顔が火照るのを感じながら家族の声も耳に入れずに階段を駆け上がった。
荒れる息を整えつつ、階段をあがったものの自室の場所を聞くのをすっかり忘れていた事を思い出した。バカだな。あんなに取り乱して。と熱の篭った2階の廊下が先程の反省をする時間を与えてくれる。窓の外は相変わらずジリジリと熱されており空は白い雲の隙間から澄んだ青色が覗いている。絵画のようななんとも言えない幻想的な光景に思わずため息を漏らし、
「とりあえず、扉をひとつずつ開けていくか…」
ボソリと呟き、1番手前の扉のノブに手をかける。と、その瞬間、
「そこ、俺の部屋なんだけど?」
耳元に響く声とともに背中に重みを感じた。咄嗟のことにどういう状態なのか分からないまま衝動的に振り向くと目の前には海が立っていた。驚きのあまり上手く言葉が出てこない。取り乱された自分とは裏腹に海の顔は先程と変わらずニヤニヤと笑っている。
「またこんな所で会えるなんて…思いもしなかったよ。ね?みーつき?」
耳元で囁かれる声に危機感を感じないものは居ないだろう。後ずさろうとするが後ろは扉で塞がれており逃げ道がない。
「…僕は…もう…変わったんだ…もう…」
声を絞り出して途切れ途切れ言葉を紡いでいくがそれは海の唇によって塞がれた。
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