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第3話

唇から伝わる柔らかい感触が僕の心を翻弄させる。このままでは流されてしまう。けれど、嫌なはずなのに…腕に力が入らない。いつの間にか腰に手が当てられさらに強く重ねられる。 ようやく腕と唇が離されそのまま立ち去ろうかと思ったか足がおぼつかず、そのまま床に座り込んでしまう。 「いい加減に…しろ…!…あの時の僕とは…違う……!」 読めない表情で見下す海に僕は声を振り絞る。まだ感触の残った唇を服の袖でゴシゴシと拭いながら立ち上がろうと足に力を入れる。すると海は僕の左腕をグイッと掴み立たせてくれる。 「…ごめんね?…深月の部屋はそこだから。」 読めない表情のまま隣の部屋を指さしたかと思うと僕をずらして自室に入ってしまった。見覚えのある「読めない表情」が気になりつつ静まり返った扉をしばらく見つめていた。 ダンボールの積まれた部屋に入りゆっくりと扉を閉める。先程の海の表情を思い出して何故か頭がむしゃくしゃしてくる。会いたくもないやつにこんな所で再会して突然キスまでされて、なのにあの顔。考えたくもないのに海のことが頭に浮かんでしまうではないか。 「海…」 ボソリと無意識に名を呼んでしまう。そして部屋奥に唯一設置されたベッドに横たわりながら頭を整理していく。 「……海…変わってなかったな…」

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