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第12話

朝。ハッと目を覚まし、隣に目をやると、和長様はまだ眠っていた。時計を見遣ると、5時だった。 あどけない顔でスヤスヤ眠る和長様を見て、ホッとする。サラ…と髪を撫でて、僕は立ち上がった。そう、僕としたことがすっかり忘れていたんだ。 ――押入れに詰め込んだ、仁の事を! 昨夜は和長様の事を考えていたら、いつの間にか寝落ちしていて…。ああ、こんな失態は久しぶりだ。とにかく早く、アイツを引っ張りだして帰ってもらわないと。和長様が目覚める前に! ガラ、と戸を開ける。 「……わっ…」 開けた途端、顔が目の前にあって、仰天した。 「よっ!おはようさんと言いたいところだが、俺は今から寝るぜ。俺ってば夜行性なのに、昨日の昼からずっと起きてたからなぁ。ねみぃ、ねみぃのなんのって」 んあーっと伸びをする仁。あくびをひとつすると、パタッと倒れ、押入れの中で寝息をたてはじめてしまった。 「お、おい…。まさか、ずっと起きてたのか…?」 眉根を寄せて、しばらく考える。一体コイツ、何が楽しくて押入れに入ったままずっと起きてたんだ?いや、仁の存在を忘れて自分はグースカ寝てた僕が言える事じゃないけど! 「待ってた、のかな」 ポツリとそんな言葉が出てきて、焦った。最悪だ。僕は、人に迷惑をかけるのだけは大嫌いなんだ。自分がかけられるのはまあ…いやだけど。…とにかく、どうしよう。 仁が起きたら謝って、それで、それで。昼間は仕事があるけど、夜は空いてるからその時にまた会って、それで話そう。あ、庭で花でも摘んで、詫びようか。ははは、何て少女趣味なんだろ、僕。 「……………」 そこまで考えて、うずくまって頭を抱えた。 「落ち着け、蝉……!」 自分が、まるで仁と会いたいみたいな考えを持っていることに気がついたからだ。そんなのはありえんない、絶対に!夜に誰かと会うなんて、そんなのは確か…。そ、そうだ。ふじゅんいせいこうゆう?って言うんだ!…あ、でも僕も仁も男だから…。そういう時は、何て言うのだろうか。 ブンブン頭を振ってああだこうだ言っていると、ゴソ、と和長様が動いた。まずい、起こしてしまったか。時計を見ると、さっきから随分時間が経っていた。 「ん…。蝉、おはよ…」 まだ眠そうな目を擦りながら、あくびをする和長様。 「おはようございます。よく眠れましたか?」 「んー、えっと…。夢を見たぞ…。蝉とお母様とお父様と、あとかずで、宝探しした…」 「へえ。楽しかったですか?」 「!うん、楽しかったぞ!大きい竜がバーッて来て、そしたらこんな小さな妖精が道案内してくれて、」 一気に目をキラキラさせて夢の話を語ってくれる和長様。それを聞いていて、そろそろ皇后様がお帰りになる頃だと思い出した。和長様をお部屋に帰さないと。 僕は夜着からいつもの薄い着物に着替えて、和長様の服を整えた。 「和長様、お部屋に帰りましょう。もうじき皇后様がお戻りですよ」 「あ、そうだった!お母様にも話さないと!早く行こう、蝉!!」 「はい、行きましょう」 僕は、仁が起きた時のために、軽い朝食を机に置いておいた。 ――「夜また来てください」と、手紙を添えて。

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